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December 20, 2010

年金払特約付き生命保険の課税

生命保険には、被保険者死亡時に一時払いを受ける保険金のほかに年金で受け取る保険金がある。例えば契約で年金の総額が2300万円と決められ、これを10年間、毎年230万円ずつ受け取る仕組みである。尤も、年金で受け取らずに一時金で受け取る方法もある。その場合は、中間利息を差し引いて、約2000万円を受け取るのである。
この年金で受け取る場合と一時に受け取る場合との税金の違いが問題となった。
年金で受け取るとき、2300万円の6割(1380万円 相続税法24条)が、相続税価額として課税対象とされていた。それだけではない。毎年受け取る年金にも、保険料を控除した額が雑所得として所得税が課せられていた。なぜか。
昭和43年の所得税法基本通達では、年金受給権は相続財産であるから相続税を課す。一方、毎年受け取る年金は年金受給権ではなくなり、所得だから所得税を課す、と説明されていた。
2300万円の相続時の現価約2000万円として一時に受け取れば、2000万円に相続税を課す。年金ならば所得税、一時金ならば相続税、と言うのは一貫しない。
また、年金払いには1380万円への相続税課税、毎年もらう年金は所得として所得税を課すのは2重に課税することにならないか。
最高裁第3小法廷(7.6判決)は、毎年の年金の支給額を、死亡時の現価に相当する部分とその他の部分に分けて考えた。現価に相当する部分は相続税の課税対象、毎年受給する部分は所得税の課税対象、となるという。
これで2重課税となるおそれは排除ができたが、年金が所得税の対象になるのであれば、相続税が課せられる一時金払い金2000万円と扱いが異なる点が、まだ解決されていない。
判決は、第1回目に受給した年金のみが争点であったから、相続税と所得税を2重に課税したことになり、違法であるとした。これで、1回目は相続財産とみなしたことになる。
2回目以降の受給権がどうなるか判断していないが、1回目がそうなら2回目以降も同じはずである。ところが2回目以降は、毎年の所得になるという。
そうであれば、1380万円分は所得税の課税対象にしてはいけない。相続税との2重課税になるからである。だから、毎年貰う年金分にこの課税分1380万円をどう割り振るか、という技術的な問題が残されることになる。
そもそも相続開始時に発生した「年金受給権」とは何なのか。
また、まだ貰ってもいない財産に、なぜ相続税がかかるのか。相続税は相続した財産にかかる。相続税を課すなら、財産が現存しなければならない。未だ受給しない年金が、「受給権」という名で財産評価されている。将来受け取れる債権の現在価値相当部分を相続財産の評価額としている。だが、年金給付を定期金給付と同じに扱うことはできない。定期金給付のように譲渡性もなく流動性はない。時価評価も低くなる。一身専属性の権利だから、受給者が死亡すれば相続されるが、資産価値は低い。受給権の相続税は現在価値に引き直した分だけ低く評価しているが、資産価値が低い点を考慮していない。そこで、「受給権」に相続税を課すのは疑問であるとして、年金に所得税を課すやり方に合理性を見出す見解もある。他方、年金受給権には財産的価値があり、経済的利益が発生しているという考え方もある。
判決が1回目は相続財産であり、2回目以降は所得であるというのであれば一貫しない。正確に、相続税が課された残りの価値、つまり年金を貰うまでの間の運用益に、所得税が課されるというなら分かる。しかし、相続税の対象とされた分にも所得税がかかるというのでは、高裁判決と同じ2重課税になろう。この点は、被相続人が所得税を払った残りの資産を相続した相続人が相続税を払うのは2重課税ではない、ということと比較すれば、2重課税の議論たりえない、という反論もある。ただ、相続人がさらに所得税を払う理由はどうしても分らない。
実際の年金受取時が所得実現の時期であると理解しても、受給権を相続して課税したのであるから、2回目以降に所得税を課すのは2重課税である。これをひっくり返して、年金を受け取る度に所得が発生するという見解(所得税法183条1項を年金が雑所得であるとしたものと解する立場)をとれば、相続時の年金受給権なるものは、相続財産でないことになる。この場合は基本通達が間違いであることになる。

一時払いなら2000万円貰える。年金なら2300万円のうち1380万円が相続税課税対象になり、残りに相続税はかからない。判決では、1380万円を10年間に割り付け、1回目に貰った230万円もその一部であると見て、230万円分には所得税をかけなかった。
そうであれば、1380万円に対して相続税をかけているのであるから、1回目のみならず、10回目まで、所得税を課すべきではない。判決の2回目以降を推測すると、毎年230万円に対するその年の現価が所得税のかからない所得になるはずであるが、年金に所得税を課して源泉徴収することは違法でない、ともしている。所得でないのに生命保険会社は徴収して国に納付すべきであるという(所得税法208条)。源泉徴収が違法でないなら、受給者は国に還付請求できなければならない。そして判決は還付請求を認めた。
源泉徴収は徴税の手続である。所得税を課すか否かは、年金が所得であるか否かの性質論にかかっている。所得でないものに所得税を源泉徴収することはできないのではないか。
手続が実体を振り回していないだろうか。
判決の考えていることがよく分からない。私の考えがおかしいのであれば教えてほしい。
10月20日の所得税法施行令の一部改正がなされた。2回目の非課税部分は209万円、3回目の非課税部分は189万円、10回目の非課税部分は46万円となるようだ。これは、1380万円に相続税がかかることから出てくる計算であって、その年の所得計算をしないと毎年の所得税額が算出されないのは当然である。
さて残る問題は、1380万円の残りの非課税部分の評価である。一時金2000万円貰って相続税を払うより(その代わり、運用できる)、年金受領時に相続税の対象となった1380万円の割り付け分を差し引いて貰う方がお得、になるのだろうか。高齢者が受取人である場合、10年間待てるか、所得がないのに所得税が減るメリットがあるか、の問題もあり、優劣はなんともいえない。被相続人が払い込んだ保険料を受取人の年金から控除できる(政令1項8号)としていることの当否にも議論が残っている。

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Comments

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