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August 10, 2010

郵政民営化勧進帳の巻

 ご存じ,能楽「安宅」,歌舞伎「勧進帳」をご想像あれ。
安宅の関にさしかかった弁慶に富樫はいう。「まことの山伏ならば勧進帳をもっていよう。勧進帳を遊ばされ候へ。これにて聴聞申そうずるにて候。」
弁慶「もとより勧進帳あらばこそ」。持っていた巻物を出し勧進帳と称して高らかに読みはじめる。「聖武天皇夫人が建立せられた盧遮那仏の霊場(東大寺)が絶えなんこと悲しみて,俊乗坊重源が諸国を勧進す。一紙半銭なりと奉れば,この世にては無比の楽を得,当来にては数千の蓮の上に座せん。敬って申す。」その読み上げがいかにも見事だったので関守は一行を通す。最後尾に義経が通ろうとする。富樫「そこの強力 とまれ」。山伏一行は怪しまれては一大事と色めき立つ。弁慶はおしとどめ「いかにこの強力をとがめるや」と問う。富樫「その強力が判官殿に似ているという者がいる」。弁慶は義経にいう。「腹立ちや日高くは、能登の国まで指そうずると思いつるに、僅かの笈負って後にさがればこそ人も怪しむれ。よろよろと歩み給うばかりに怪しまれん。いでもの見せてくれん,打ち据えん」と,さんざんに金剛杖で打擲する。
止めようとする富樫に弁慶は「荷物をもっている者に目をつけるとは,盗人か」と悪態をつき,供の者も「強力に刀を抜くとは臆病者」と立ち向かう勢い。迫力におそれをなし富樫は「近ごろ,誤りて候,お通りくだされ。」と関を通す。酒を持って追った富樫に弁慶は舞う。「鳴るは滝の水 日は照るとも絶えずとうたり」「とくとく立てや。心許すな関守の人々。虎の尾を踏み毒蛇の口を逃れたる心地して,陸奥の国へぞ下りける」といい謡う。一同,陸奥の国へむけて逃れ行く。(松本幸四郎も,かって東大寺で歌舞伎「勧進帳」を奉納した)
弁慶は勧進帳を持たず,巻物をそれらしく読み上げた。なお義経を打擲しようとする弁慶を,押しとどめて富樫は関所を通す。行き先は陸奥の国。そのが安楽の地である保証は何もない。ひたすらに落ち延びてゆく。
小泉政権が進めた郵政民営化の進む先には何が待つか。民営化が書かれたはずの勧進帳には,実は何が書いてあったのか,郵政の落ち行く先はどこか。

(橋懸かり・花道口上)
小泉政権が強力に進めた郵政民営化は,17年10月に関連法が成立した。翌年1月には準備企画会社としての日本郵政株式会社(日本郵政)が設立され,19年10月,日本郵政公社は解散し,公社の4つの機能(郵便,窓口サービス,貯金,保険)は新たな4つの事業会社(郵便事業株式会社,郵便局株式会社,株式会社ゆうちょ銀行,株式会社かんぽ生命保険に引き継がれた。日本郵政は4事業会社を束ねる持株会社に移行し,民営化が実現した。
日本郵政の株式はすべて国が保有し,グループが国民共有の財産として公的性格を有することに変わりはなかった。
郵政民営化法では,「政府が保有する日本郵政株式会社の株式がその発行済株式の総数に占める割合は,できる限り早期に減ずるものとする」「日本郵政株式会社が保有する郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式は,移行期間(19年10月1日から10年間)中に,その全部を処分するものとする」と定められ,早期に持株会社及びゆうちょ銀行・かんぽ生命の株式を売却することで,株式保有の面でも民営化を徹底することが予定された。民営化に先立ち,元三井住友銀行頭取の西川善文氏が,18年1月に,準備企画段階の日本郵政の社長に,そして,19年4月に日本郵政公社総裁に就任した。
(一幕)
同年10月の民営化以降も,西川社長を中心とする体制で同グループの経営が行われた。21年頃から,「かんぽの宿」の一括譲渡をめぐる問題が表面化するなど日本郵政グループの業務執行の在り方に関して多くの問題が表面化し,社会からの批判を浴びる有様となった。昨年8月の衆議院議員総選挙で民主党が圧勝して政権交代が実現し,郵政民営化に反対してきた民主党,国民新党,社民党による連立政権が発足し,政治の舞台は激変した。
連立政権は,10月20日,「郵政改革の基本方針」を閣議決定し,郵政改革に着手。同日の西川社長の辞任表明を受け,28日,元大蔵事務次官の齋藤氏を社長に選任し,新経営陣を選任。その後,10月30日に,政府が保有する日本郵政の株式と日本郵政が保有する金融2社の株式の放出等を禁止する法律を臨時国会に提出して12月に成立,同月末施行となった。郵政改革に係る措置内容及び新日本郵政株式会社の規律等を規定した郵政改革関連法案(郵政改革法,日本郵政株式会社法及び整備法)は,今年4月に閣議決定され,国会に提出された。7月,参院選挙が行われ,なんと,連立政権は敗れる。
その前に総務省は,郵政の業務執行の在り方等についての検討を活用することを目的に,コーポレート・ガバナンス,コンプライアンスの分野において専門的知識・経験を有する弁護士,会計士,経営学者を構成員とする委員会を設置した。
 「日本郵政ガバナンス問題調査専門委員会」が読み上げたのが,今様「勧進帳」である。
何が書いてあるか。簡単に言うと,西川社長時代の日本郵政に発生した問題について,第三者的立場から,コーポレート・ガバナンスとコンプライアンスの観点の調査・検討を行い,今後の日本郵政の経営体制及び業務に生かそうとした。
(二幕)
ガバナンス問題専門委員会の報告書は,5月公演で朗々と読み上げられた。
弁護士,総務省郵政行政部担当者,日本郵政及び同グループ会社のコンプライアンス担当者で個別検証チームを構成して,各事案の検証した。政治対立を背景に進められた現在の郵政民営化による経営形態や会社が負う使命の変化が,日本郵政の経営に大きな影響を及ぼしてきた中で,その時々の国の基本方針に従いつつ,業務の公正と適正を確保するために,日本郵政のガバナンス及びコンプライアンスはいかにあるべきか,過去の事案の検証を踏まえて,分析・検討するという。報告書と検証総括報告書を,富樫,いや原口総務相に提出した。
1 郵政民営化の目的
 郵政民営化は,民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれに委ねることが,より自由で活力ある経済社会の実現に資する郵政民営化の基本方針に則した改革である。
基本方針では,「明治以来の大改革である郵政民営化は,国民に大きな利益をもたらす。
① 郵政公社の4機能(窓口サービス,郵便,郵便貯金,簡易保険)が有する潜在力が十分に発揮され,市場における経営の自由度の拡大を通じて良質で多様なサービスが安い料金で提供可能になり,国民の利便性を最大限に向上させる。
② 郵政公社に対する「見えない国民負担」が最小化され,それによって利用可能となる資源を国民経済的な観点から活用することが可能となる。
③ 公的部門に流れていた資金を民間部門に流し,国民の貯蓄を経済の活性化につなげることが可能になる。こうした国民の利益を実現するため,民営化を進める上での5つの基本原則(活性化原則,整合性原則,利便性原則,資源活用原則,配慮原則)を踏まえ,以下の基本方針に従って,07年に日本郵政公社を民営化し,移行期を経て,最終的な民営化を実現する。」という。
 郵政公社の4機能が,民営化を通じてそれぞれの市場に吸収統合され,市場原理の下で自立することをめざす。①経営の自由度の拡大,②民間とのイコールフッティングの確保,③事業毎の損益の明確化と事業間のリスク遮断の徹底を行う方針,と唱う。
2 求められる業務の適正さ
 経営上の意思決定及び業務の遂行が,その基本方針に基づく郵政民営化の目的実現に資するものであることが求められる。同時に株式会社として一般的に求められるガバナンス上及びコンプライアンス上の要請に加えて,国がすべての株式を保有すること,事業の公共性などから,業務執行において効率性,収益性が重要視され,公正性,公平性,透明性が求められる。資産の活用や処分においても一層の適正さが要請される。日本郵政の特質に基づくガバナンス上,コンプライアンス上の要請である。
 経営委員会の「グループ経営方針」の中でも,「企業としてのガバナンス,監査・内部統制を確立しコンプライアンスを徹底します」「適切な情報開示,グループ内取引の適正な推進などグループとしての経営の透明性を実現します」とされているではないか。
 検証総括報告はいう。西川社長時代に,政治情勢の激変の中,「郵政民営化を後戻りさせないように」との意図が背景あるいは誘因となって,拙速に業務執行が行われたことにより多くの問題の発生につながったのではないか。国民の財産としての公共性と事業の公的性格に基づく要請に反することは許されない。
経営と業務執行は,ガバナンス,コンプライアンスの中で行なわれなければならない。
その事業をめぐる環境は,外部要因に強く影響される。これまでの日本郵政の経営をみると,その変化を見越し,環境が大きく変化する前に短期的に結果を出そうとして拙速に経営上の意思決定が行われ,事業が遂行される危険性を有しているものと推察される。
短期的に一方向に偏った経営及び業務執行が行われた事実があり,今後も同様のリスクが顕在化する可能性があることを踏まえ,経営上の意思決定及び業務執行の適正を確保し得る経営体制や業務遂行の在り方を検討したい。委員会の使命も,この観点から,検証総括報告書における検証結果に基づき,日本郵政のガバナンス及びコンプライアンスの在り方について検討を行うことにある。
                                              三幕へとつづく

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Comments

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