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October 16, 2009

商法改正は成功しているか

以前の法改正議論で恐縮だが,平成5年の商法改正国会議事録を読み返して感じたこと。
そのときの改正論議では,株主の監督是正機能強化,監査機能強化が大きな目玉だった。当時,日米構造協議の中で取り上げられた株主代表訴訟,社外監査役(アメリカには監査役制度がないので,社外取締役というべきか)を導入し,監査役が会社の業務あるいは会計の監査をするためにその分,株主の権利が制限されている(たとえば帳簿閲覧請求権が厳しい)のをどう是正するか,などが議論された。
とくに企業経営内容の開示はアメリカの強い要求であり,株主の権利を拡充することを約束させられた経緯がある。
株主代表訴訟制度は昭和25年からあったが機能していなかった。監査役による日常的なチェックが期待できない状況があり,会計監査も違法,不正の摘発に至らなかった。
だから,株主自ら会社が取締役の経営判断をチェックするしかない。しかし,会社が違法行為をした取締役等から回復すべき損害の額が多いほど,提訴時の印紙代が高い。そこで,訴額を一律95万円とし,印紙額8200円で訴訟を起こしやすくした。訴訟物は取締役等に対する請求額であり訴えの利益でもあるが,会社が代表訴訟で受ける実質的利益は別にある。むろん,勝訴して回収できる額もだが,違法な株式発行差し止めにより,将来的に会社が受ける利益などは計り知れない。
そういったことが,費用計算するときの「相当な額」に反映される。代表訴訟に勝訴した株主は会社に対し支出した費用を支払いを請求できることにしたのである。ただし,代表訴訟は原告が勝訴しても個人的に受ける利益は何もなく,提訴のインセンテイブは弱い。アメリカでは,デイスカバリにより原告株主が広範な資料・証拠・情報を収集することが可能であり,93年の連邦民訴規則によって導入されたデイスクロージャーが適用されると被告取締役側が基本情報については最初から開示することになっているが,日本ではこうした情報開示制度はなく,印紙額を安くしても原告株主の手元に必要な資料はなく,訴訟維持が困難である。
このように勝訴株主は相当な費用と,相当な費用と報酬を会社に請求できることにしたが,この点の法整備が不十分であったため,勝訴しても,また提訴するという大きな負担を残した。
政府委員の答弁を読んでも,代表訴訟の後始末について何も考えていないことが分かる。
法律家参考人もかえって濫訴の心配をしており,新しい法制度をいかに活性化するかの視点がない。提案しながら逆の方向を向いていた。
社外監査役の導入は,平成3年以降の証券金融不祥事(野村,日興,山一証券の損失補填)の発生で,監査機能を充実させるべきだという時代の要請が,経済界の反対を押し切る原動力になった。
株主の帳簿閲覧請求権は何に使われるのだろう。取締役が不祥事を起こせば,責任追及のために取締役会議事録,会計帳簿を閲覧することが有益である。議事録にはどの取締役がどのような発言をしたかが詳しく記載されているはずであるからである。発言記録がなければ問題意識がなかったと事実上推定される。
 会計帳簿の閲覧は,旧法では発行済み株式の1割を持っていないと出来なかった。大会社であればおそろしく大株主しかできない。改正後の3%でもそうだ。帳簿の閲覧請求権は機能するのか。一人では無理だから何人か集めて3%を確保するしかないが,大会社に対しては無理だろう。政府委員は,閲覧の対象は,営業上の諸帳簿,総勘定元帳,日記帳,仕分け帳簿,補助帳簿等すべてであるから,大切な書類で無闇に見せる物ではないと説明している。会社は株主が権利確保するための調査目的もなく請求したら,閲覧を拒否できる。
どこまでが権利確保のための調査目的なのか。2号の「競業の意図」とならべて見ると,株主の権利と関係のない個人的な投資目的のための資料としての閲覧などであろうか。閲覧謄写により利益を得る目的で他人に通報するためであれば,取締役は請求を拒否できた。
 取締役会議事録の閲覧謄写につき,昨年12月26日の佐賀地裁の決定,①の個人的利益を計る目的でも株主権利行使目的も併存することがあるという判断には賛成,②の株主としての権利行使に藉口した請求であり,実質は株主の権利行使であると認められない場合については,必要性の要件が否定されるという判断は,ケースによる。会社の損害を株主の利益と比較するという設定自体に,基準として曖昧さを感じる,との私の意見を述べた。
 取締役会議事録と会計帳簿の閲覧制限事由は異なる。会計帳簿の閲覧は株主の権利行使のためでないとき等を除き,原則として自由である。権利行使目的,競業意図,利益目的での通報など閲覧制限事由があるのだから,100分の3以上の株主を集めなければならない理由に乏しい。実際に100分の3の確保は非常に難しく,大会社での実例はM&A事案以外に見当たらない。
平成17年にも会社法の改正があった。
会計帳簿・計算書類は商法の規定と大きく変わっていない(100分の3もそのまま)。会計帳簿の適時に正確な記載をなす義務づけ規定(会社法432条1項)が設けられた。
経営陣の職責として,内部統制システムの構築を明文化したことに伴う義務である。
適時開示させるのはいいが,株主固有の権利である閲覧請求の要件が依然として厳しいのでは困る。(アメリカでは,コモンロー上,閲覧謄写請求権は株主の単独請求権として認められている。)


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