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April 27, 2009

住民訴訟の弁護士費用

 住民訴訟の弁護士費用には随分考えさせられることは,11月18日のブログで指摘した。
 4月23日,最高裁第1小法廷は,自治体が発注したゴミ焼却場の建設工事を巡り,談合で不当に価格をつり上げられていたとして市民が工事を受注した会社などに賠償を求めていた3件の訴訟で,企業側の上告を棄却する決定をした。これで,5社に対し計67億円の賠償を命じる判決が確定した。3件の訴訟は,横浜市,神戸市,福岡市の発注工事を巡って起こされたものである。賠償を命じられたのは,日立造船,タクマ,川崎重工,JEEエンジニアリング,三菱重工など。
さらに注目すべきなのが,同じ日の第一小法廷判決。勝訴した住民が自治体に請求できる弁護士費用についてである。宇治市からの受注工事をめぐる談合事件で勝訴した住民側が,市に弁護士費用1500万円を請求した事件で,最高裁第一小法廷は,企業に1億3千万円以上の賠償が命じ、宇治市が既に9500万円を回収していることなどが考慮されていないと指摘して300万円に減額した高裁判決を破棄。京都地裁の900万円の支払いの判決が確定した。小法廷は「訴訟の難易、弁護士の労力の程度や時間、認められた賠償額や回収できた額などを考慮し、総合的に判断すべきだ」と判示した。
判決は,大切な論点に触れている。
 地方自治法242条の2第7項にいう「相当と認められる額」とは,住民訴訟において住民から訴訟委任を受けた弁護士が訴訟のために行った活動の対価として必要かつ十分な程度として社会通念上適正妥当と認められる額をいい,その具体的な額は,訴訟の事案の難易,弁護士が要した労力の程度,時間,認容された額,判決の結果普通地方公共団体にが回収した額,住民訴訟の性格その他諸般の事情を総合的勘案して定められるべきである。
 判決認容額は1億3000万円を超え,判決の結果,京都市は9500万円を回収しているから,弁護士報酬の「相当と認められる額」を定めるに当っては,これら認容額及び回収額は重要な考慮要素となる。
 住民訴訟の目的,性質を考慮したとしても,原審のように,一般的に,従たる要素として他の要素に加味する程度にとどめるのは相当ではない。原審は,事案が易しいとか,訴訟追考に当たり労力の程度及び時間がかなり小さいものであったなど,「相当と認められる額」を大きく減ずべき事情については何ら説示しておらず,むしろ,受任弁護士らは訴訟追行に相当の労力を要したことが推認される。原審は「相当と認められる額」とすべき合理的根拠を示していないから,法242条の2第7項の解釈適用を誤ったものである,と。
補足意見もあり,その一つは「相当と認められる額」とは,弁護士活動の「対価として必要かつ十分な程度として社会通念上適正妥当と認められる額」である。また,他の補足意見はいう。「原告たる住民がその住民訴訟の追行を弁護士に依頼した場合の報酬額を相当と認められる金額を前提として,その支払を普通地方公共団体に請求できるとするにとどまる,原告にもたらされる利益は,公益が達せられるという非経済的利益であるから,非経済的利益の内容や程度に対応するものとして算定されるべきである。
 勝訴判決における請求の認容額や普通地方公共団体への現実の入金額も,重要な判断要素となる。
 なぜ,この判決が重要かというと,住民訴訟がもともと公益目的であり,直接原告に経済的利益をもたらす訴訟ではないという特殊性があるとしても,判決の認容額と回収額は,現実に住民全体が得た利益として考慮されざるを得ない,考慮するのが当然だ,公益性は二の次だ,とした点である。

 ついで,4月22日の大阪高裁の判決。ほんとに,時代の流れを感じる。
 川崎重工が京都市に支払うよう命じられた住民訴訟の判決後の報酬請求訴訟で,弁護士費用が一審の3000万円から,5000万円に増えた。
 市が得た経済的利益は国に返還した補助金を除いた16億円と認定し、弁護士会の基準を当てはめるなどして報酬額を9700万円と算出。さらに「多額の弁護士報酬請求が、市の事務遂行に影響するのは避けるべきだ」などとして、5000万円が相当とした。
「弁護士と地方公共団体との間に委任関係はないが,報酬規定は弁護士がした事務処理の対価の標準として適正妥当なものというべきである。報酬規定は,報酬の請求者なし最終的な帰属者と支払者との間に委任関係が存在しない本件報酬額の算定においても重要な要素となるべきであり,準用される。日弁連報酬規程15条に関する日弁連調査室の解説には,「債権者代位訴訟,株主代表訴訟,住民訴訟等,いわゆる法定訴訟担当の場合は,弁護士を依頼した訴訟担当者は,権利義務の帰属主体ではないが,本条の関係においては訴訟の対象となっている権利義務の価格を経済的利益の額とし,これを基準に弁護士報酬を算定すべきである,との記載がある。経済的利益は利息及び遅延損害金を含む債権総額とする解釈が一般的である。この解釈は裁判所を拘束するものではないが,本件報酬規程の解釈にあたっても考慮すべき一事情となるというべきである。」
 「各弁護士会の報酬規程は,弁護士が日常扱う事件について,事件の難易軽重,受任者の支払った労力の程度,その成果,事務処理の期間等を事件の類型ごとに一定の標準化を行っており,その標準化の内容が運用の過程において一定の社会的承認を得ている。」
 「住民訴訟は,委任を受けた弁護士がする委任事務処理の負担が,直接地方公共団体から相手方に対する損害賠償請求訴訟の委任を受けた場合より軽いとは考え難い。」
 「住民訴訟の代理人弁護士についても,地方公共団体の代理人弁護士の報酬の標準が,標準の報酬として想定されるべきである。その経済的利益の額は,利息及び遅延損害金を含む債権総額とするのが相当である。」 「事件の対象額や委任事務の処理により確保した額の多寡は,標準の報酬額を定めるに当たりまず重視すべき事情であって,単に「増額要素」にとどめるとする見解は本末転倒というほかない。」「着手金の基準は事件の対象の経済的利益の額,つまり請求債権総額とみるべきでありるが,一審認容額が元本11億4450万円と遅延損害金であるから,原告の言う経済的利益18億3210万円の主張は相当である。控訴審の着手金も同じ額であるとする原告の主張は相当である。」
として,最終的には着手金,報酬の両方について,住民全体の利益のためになされた訴訟である点を考慮し,30%を減額した。その上で控訴審着手金は同じ弁護士が引き続き受任していることを考慮して,ほぼ半額とした。一,二審着手金報酬の合計はで約9700万円となる。ただし,直接の任関係がないこと,公益の代表者として地方財政行政の適正化を目的とするものであること,多額の請求が地方公共団体の事務の遂行に影響を及ぼすこと,その他本件の全部の事情をあわせ考えて,5000万円とする,とした。
 この判決の最後の減額考慮は説明不足,竜頭蛇尾でいただけない。むしろ23日の第一小法廷判決の考えの方が進んでいる。ともあれ,報酬規程準用を原則にした意義は大きい。


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