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January 06, 2009

保険法

昨年5月,保険法が制定され,従来は商法の一部にあった保険に関する条文が,新保険法として整備・制定された。2年以内に施行される。100年ぶりの私保険契約のルール改正と言われる。保険法制定の趣旨は,「保険契約に関する法制を現代の社会経済に的確に対応したものとするため,商法の保険契約に関する規定を全面的に見直して,保険契約に関する新たな法典を制定し,共済契約をその適用範囲とするとともに,傷害疾病保険に関する規定を整備するほか,保険契約者等を保護するための規定を整備し,表記を現代用語化する」というもの。
保険を損害保険,生命保険,傷害疾病定額保険に3分類し,傷害死亡,疾病死亡に一定額の保険給付を行うものを傷害疾病定額保険とした。順に説明します。
 新法は共済にも適用される。従来,商法は農協,生協等による共済には適用されず,共済に関する一般的な契約ルールはなかった。しかし,共済が社会的に重要な役割を果たしており,保障機能は保険契約と変わらないことは周知であることから保険と同じ規律に服することになった。。
 つぎに,傷害疾病保険の規定を置いた。この保険は実損害の填補ではなく定額の保険給付であり,煩瑣な損害査定実務を必要としない。それでは全く不要かというと,疾病の認定と治療期間の査定はやはり必要である。これで,結構,保険者と契約者との間で揉める。自動車保険の搭乗者傷害保険にもこの査定実務が伴う。約款の適用と解釈は今後も困難な実務上の問題として残る。
 重要事項の告知。従来,告知は保険契約者が自覚してしなければならなかった。受胎告知のように,天使ガブリエルが処女マリアに聖霊によってイエスを身ごもることを突然に告げてくれるのではない。既往症を隠していると告知義務違反で保険金支払いを断られた。ただし,保険者が被保険者の既往症を見つけるのは言うほど簡単ではない。弁護士の腕の見せ所だったが,これをきちんと評価できる保険者もおらず,ついに個人情報として保護されるようになり,過去の話になった。保険の適切な運用を確保するために,告知により保険者が危険選択のための情報を得る機会を与えることが必要になる。新法では保険契約者等は保険者から質問された事項について告知すれば足りる。保険募集人の告知妨害があったときには告知義務違反があっても契約解除できないことになった。もう,契約者が契約時にあれこれ記憶をたどる必要はない。
もともと保険募集人は傷害疾病保険に既往症の告知を求めることには不熱心だった。疾病概念がはっきりせず,相当数が既往症無しで契約されていた。もし募集人が細かく聞けば既往症が強調され,疾病があり保険金が支払われない虞があることを説明せねばならず,それならば保険に入るのは止めておきましょうという結論になる。保険が成約しにくい。
保険契約者が重要な事項が何か,自分で判断するのも難しい。この告知義務を改めた。
言った,聞いていないのトラブルを減らすため,保険者が自ら告知を求めたものについてその事実を告知しなければならないことにした。危険を引き受け,保険金を払う保険者が,重要な事項を列記し確認すれば,事は足りる。嘘を言い告知義務違反があったとしても,保険媒介者(代理店)に告知妨害(契約を取りたいために嘘を付かせる等)があれば契約解除できないこととされた。
 また,保険金の支払のための調査を行う客観的な期間が経過したあとは,保険者が遅滞の責任を負う。これらの規定より保険契約者等に不利な内容の合意は無効とする,などが盛り込まれた。
 事業が営利目的であるか否かは,上記の各論点に影響しない。契約の機能は保険も共済も同じである。ただ,共済が保険法の適用対象になると,認可共済団体を監督する機関が金融庁になる可能性が出てくる。監督官庁が変わったからと言って,契約の内容まで変わることはないが,昨今のように保険金不払い事故があったりすると,監督官庁の姿勢が問われるから,契約者保護にも多少の影響があるかもしれない。
 保険金支払時期の設定はいつまでも保険給付を遅らせないための措置として大切である。調査確認中と称してずるずると支払を遅らせたら,何のための保険か意味を失ってしまう。ただし,ここでも確認に必要な期間が問題になりうる。確認するための相当の期間は,事案によって異なる。最終的には裁判所が判断する。
 責任保険契約における被害者保護が盛り込まれた。被保険者(例えば交通事故の加害者)に対して,被害者は保険金請求権につき先取特権を有することになった。これにより,他の債権者の配当加入を排除することができる。
 超過保険。つまり保険契約時に保険金額が保険価額を超えていたときに,超過部分の契約を一律に無効としていたのを改め,超過部分の契約も有効とした上で,善意・無過失の保険契約者に超過部分の契約を取消権を認めた。これにより,契約者は超過部分の保険料を返還を求めることができる。
 重複保険。複数の保険の保険金額の合計が保険価額を超える場合でも,超過部分の保険も有効とし,各保険者は各保険契約に基づく填補損害額の全額を給付することとした。これを独立主義という。保険者がもし自分の負担部分を超える保険給付をしたときは,この部分につき他の保険者に対し,各自の負担部分につき求償できる。
 免責事由。保険契約者の故意による事故招致には保険金が下りない。ダスキンの取締役13名は会社に対する損害賠償を命じられたが,TBHQ混入に直接関与した2名は故意で保険事故を招致したものとして,53億円の支払責任につき保険金が全く下りなかった。
未認可添加物を故意で混入させたわけではないが,隠して販売したことが故意による事故招致と保険者が評価したようである。しかし,事故が販売にとどまらず,混入を公表しないことをもいうとしたら,評価は変わるはずだ。

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Tracked on January 06, 2009 at 02:24 PM

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