不動産鑑定評価の怪
平成14年7月3日付国土交通事務次官の通知「不動産鑑定評価基準の改正について」は,つぎのように不動産鑑定士協会にいう。
「不動産鑑定評価基準及び不動産鑑定評価基準運用上の留意事項は、不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行うに当たっての統一的基準であり、不動産の鑑定評価に関する法律(昭和38年7月16日法律第152号)第40条第1項及び第2項の規定に基づき不当な不動産鑑定評価についての懲戒処分を行う際の判断根拠となっている。
40条は、不当な鑑定評価を行ったときの、鑑定評価業務の停止、不動産鑑定士の登録抹消の条文である。1項は故意に不当鑑定を行った場合、2項は相当の注意を怠って不当鑑定を行った場合の処分をいう」と。事務次官通知で、不動産鑑定評価基準は、「法40条に基づき不当な不動産鑑定評価についての懲戒処分を行う際の判断根拠となるものである」と明言しているから重い通知だ。2005年7月には不当鑑定についての処分基準となる「不当な鑑定評価等に係わる処分の考え方」が発表された。
この一連の国交省の動きを見ると、不動産鑑定評価の不当鑑定に対しては厳しく対処しょうとする姿勢が伺われる。不動産鑑定評価基準は法律ではないから守らなくてもいい,などとんだ心得違いだろう。それではその不動産鑑定評価基準はどのような内容なのか。
それがいまいちよく分からないのである。
・借地権の更新料が借地権価格の3%~7%更地価格の2%~5%程度とされている実情に根拠があるか。小さ い土地の場合は割高となり,定期的な地代の値上げをしていない場合や地代が割安の場合、前回の更新料が なかったか安かった場合は割高となる。ケースバイケースによっているが,基準があるのか。
・借地権の建替え承諾料は,普通建物から普通建物への条件変更の伴わない建替えで更地価額の4%程度と言われているが,根拠があるか。
・借地権の条件変更承諾料は,普通建物(木造等)から非堅固な建物(鉄筋コンクリート、鉄骨等)に条件変更を伴う建て替えの場合。更地価格の10%~15%の範囲内とされているが,根拠があるか。
・借地人が借地権を譲渡するには、地主の承諾が必要であるが,地主の承諾を得るために承諾料を払わなけれ ばならない。名儀書換料(借地権譲渡承諾料)は「借地権価格の10%」程度で、どこでも鑑定評価されているようだ。こうした解釈に根拠があるか。
以上の鑑定評価の実情に,国交省の評価基準は一切お墨付きを与えていない。何も触れていないのである。むろん,上記運用上の留意事項にも登場しない。ただ「慣習的にその様な金額の授受が行われているから」という説明しか伝わってこない。なぜ借地権譲渡承諾料が借地権価格の10%なのか。きちんと説明できる不動産鑑定士はいないし,理論もない。尤もらしく,①譲渡利益配分説②差額地代精算説③承諾料説④借地権価額説⑤慣行承認説などの説を掲げて,どれが正しいとも,どれを選ぶべきか理由をのべることもできず,裁判所が10%を命じることが多いから,10%を相当を考えるというお粗末な評価書が横行している。基礎となる「借地権価格」にしても,借地権の評価方法自体が曖昧である。更地価格の何割かには違いないが,何割が正解という解が用意されていない。更地価格の評価にも複数の手法があり,鑑定人によって随分評価が違うこともある。理論なき慣行。鑑定評価書という怪獣が裁判所を歩いているような気がすることがある。鑑定士も国交省が根拠を示さないのに,鑑定評価書では尤もらしく評価しなければならない立場におかれる。もし証言台でつるし上げられたら,しばらくは仕事をする気にならないだろう。鑑定士の鑑定が当てにならないとなると,裁判官が個性を発揮して独自に評価するしかない。安い地代で長期借りてきた借地人には,地代年額の20倍(利回り年5%を資本還元)して底地価格を算定し地主が借地権を買い戻せるという神戸地裁昭56.10.29や,継続地代の算定につき,地上建物の賃料を元に土地残余法などによって算出される地代の額が従前の地代を下回る場合に減額すべきことが検討されるという東京高判平14.1022などがあって面白い。裁判官が自由に創造できる世界が少しずつ増えている。


Comments
「不動産鑑定書」の被害に会い、色々調べていますが、不当鑑定の立証はかなり困難であることを他の鑑定士から伺いました。比較法が使われており、事例地の全てが私の所有している貸地とは使用目的が異なり、強い関連性や代替性の無いものだけを意識的に使用しています。中には需給圏の異なるものも採用しています。相談した鑑定士は、国土庁に訴えても、鑑定書作成の鑑定士は、事例地が他に見つからなかったと逃げるだけである。固定資産税の評価額より大幅に下回った鑑定もあり得るから処置の申請をしても無駄になる可能性が高い。本来は継続賃料になるべき鑑定書が、新規賃料となっているのも依頼主の会社法人からから聞いていなかったと逃げられるということで、鑑定士を訴えることは難しいとの話でした。平成10何年かにやはり水資源局から出された「不当鑑定に関する処分・・」?(今手元に無いので正確な名称ではありません)に書かれていることは、国土庁は実行していないように受け取れました。国土交通省もメールに対しては返事が来ませんが、官房長官室に文句を言ったら、通達の解釈に対する返事は来ました。その返答は、「鑑定書に対する疑問に対しては、第三者の誰でもが説明を求めることができ、鑑定士は答える責任がある。」とのことで、依頼主の承諾に関係なく、鑑定書を読んだものは誰でも説明を求められますので、参考にしてください。もし、メールそのものが必要に迫られたらお知らせ下さい。会社の顧問税理士と鑑定士の資格について処分の申請をしようかと思っていますが、まとまった時間が取れる8月まで今の気持ちが継続しているかなという不安もあります。社会正義の為に奮闘されることを期待しています。
Posted by: jun | June 05, 2008 at 11:46 AM