独立行政法人の成果

　国の独立行政法人法が施行されてから７年経つ。この間，100以上の独立行政法人が設立され，平成15年には国立大学法人法が成立し，翌16年には89の国立大学，4の大学共同利用機関法人が設立された。これらの法人は独立行政法人通則法の体系の外に位置づけられるが，広義の独立行政法人の範疇に入っている。
どんな業務を行い，国のどの省庁が管理するかは，法人の種類によって異なる。例えば研究機関，美術館，病院は厚労省が主務官庁になる。「国立」名称が付されているのは12法人。具体的には，「国立」公文書館，特殊教育研究所，オリンピック記念青少年総合センター，女性教育会館，，国語研究所，科学博物館，国立美術館，健康・栄養研究所，環境研究所。「国立」の名があっても職員が国家公務員の身分を持たないものとして，青年の家，少年自然の家がある。
　これらは，国が主体となって直接実施する必要はないが，民間の主体に委ねると必ずしも実施されないおそれがあり，又は一つの主体に独占して行わせることが必要であるものについて，これを効率的かつ効果的に行わせるにふさわしい自立性，自発性及び透明性を備えた法人として，独立行政法人なる制度を設けたことに由来する。従前，国が行っていた業務を代行する機能があることから，法人の目的と業務の範囲は法律で定められ，運営の基本，監督，職員の身分が個別の法律で定められている。（通則法は個別法に共通して適用され，各法人の業務には直接触れていない）。独立「行政」の言葉に，行政機関の意味はなく，行政事務を代行するに至ったものという程度の意味だろう。国家賠償法，行政不服審査法が適用される点は，国の機関と同じ。職員や大学の先生がその優越的地位を利用して処分行為をすれば，行政不服審査法の不服申し立ての対象となる。
　つぎに，平成16年には，地方の独立行政法人の制度が発足した。
　地方公共団体とは別の法人が地方公共団体が行っていた事務・事業を代って行い，効率的・効果的な行政サービスを行うものである。そこでは地方公共団体の関与・統制は極力排除されている。地方公共団体では，試験研究，地方大学の設置・管理，地方公営企業に相当する事業の経営等の一定の業務に限られている。
　今大阪の橋下知事がやろうとしているのは，府の施設の統廃合であって，独立行政法人のそれではない。府のＰＴ案では弥生文化博物館、体育会館、臨海スポーツセンター、青少年会館、現代美術センター、文化情報センター、総合青少年野外活動センター、国際児童文学館が廃止され，近つ飛鳥博物館、女性総合センター、中央図書館、中之島図書館は統合されそうだ。どの施設も存続の必要性を必死に訴えている。
　国も地方も独立行政法人の会計は，民間並みに，原則として企業会計原則に従い，各事業年度に生じた損益計算上の利益はこれを積み立て，中期計画に定められた使途の範囲内において使用できる。ただし営利を目的とする法人ではないから自ずと限界がある。国は独立行政法人の運営費を負担し，その他の財源措置を講じ，法人の業務の実績について評価し，評価の結果に基づき，業務の改善等の措置を講じることになっている。職員は国家公務員の身分をもち。地方独立行政法人の職員は地方公務員の身分をもつ。そこで財政であるが，通則法37条は「原則として企業会計原則による」としている。ただし，企業会計審議会の原則そのままではなく，独立行政法人企業会計審議会（平成12年総務庁内に設置された）が定める独立行政法人企業会計基準，同注解にしたがうのである。法令上，企業会計原則の定義はない。とはいえ，新しい制度に従来積み上げられた会計慣行はない。したがって，「企業会計の実務に中から一般に公正妥当と認められたところを要約したもので，必ずしも法令で強制されなくても，全ての企業がその会計を処理するに当たって従わなければならない基準」（昭和24年「企業会計原則」）によることになる。ということは民間の企業会計基準によることを意味する。「親方日の丸」では採算はとれない。さりとて，企業のように自由に利益処分することも許されない。利益配当ではなく，通則法44条で「積み立て」し，次年度以降の損失の補填に充てられる。政府は法人業務に要する費用を支出し，重要な財産の処分は主務大臣が許可する。会計監査は公認会計士又は監査法人と監事（学者，弁護士，会計士，企業人など）が担当する。いままでは，問題が表面化することもなかったが，法人の中には多くの含み資産を持つものが多く，おそらく地方公共団体の裏金の比ではあるまい。含み資産，公会計で雑項目扱いされていた資産を時価評価したら，きっと驚くのではないか。