« 全株式譲渡と債権者保護 | Main | 猫に鈴(内部統制監査は三者協議か) »

October 11, 2007

国際カルテル

日本航空がアメリカ司法当局の捜査を受けている。国際航空運賃を巡るカルテル(価格協定)をした疑いで,昨年,在ニューヨーク貨物事務所が,司法省と欧州委員会の立ち入り調査を受けた。このところ欧州委員会の活動が活発だ,と思ったらアメリカ司法省とも手を組んでいた。司法省は8月,BAと大韓航空にそれぞれ3億ドルの罰金を科している。両社はほかの航空会社と共謀して燃料高による上乗せ率を決め,合意のとおり貨物運賃や旅客運賃を徴収したという。ほかの航空会社にも同様の調査が入っており,制裁を科される可能性がある。日航は罰金(制裁金)が幾らになるか,予想がつかないという理由で,特別損失としての処理をしてなかった。この9月中間決算では200億円程度の引当金を積むらしい。2年続きの赤字のあと,来年3月の連結当期利益が70億円と見込まれていたが,200億円引当するようでは,3期連続の赤字は避けられまい。日本企業が海外に進出する際,法規制対策が不用意だと,こうした進出先での思わぬ反撃を受ける。一方,日本の公正取引委員会が,日本に進出した,あるいは談合によって進出を控える外国企業に,独禁法違反で課徴金を科した例はあまり聞かない。公取委は内弁慶なのか。
 公取委は,シャープと、セイコーエプソン、東芝松下ディスプレイテクノロジー、NEC液晶テクノロジーなどの国内メーカーと、世界最大手のサムスン電子(韓国)や台湾メーカーの日本法人に,価格協定の疑いで書類の提出を求めた。韓国の公取委、米司法省、欧州委員会も同時に、それぞれの国内に拠点のあるメーカーに、情報提供を求めた。日本メーカーも対象とされている。公取委の国際協調が始まったのだろうか。
 外国製のブランド品(著名な登録商標が付された商品)が年齢・性別を問わず,人気を集めている。偽物が出回ると容赦なく業者が摘発され(景表法,不正競争防止法),廃棄される。こうして高価格が維持されている。ブランド品メーカーは小売業者に再販売価格を指定(公取委告示15号)しているのだろうか。販売業者は価格競争しないのか。お互いの利益を確保しているのか。価格協定しているのではないかetc?
 ブランド品の価格維持の秘密は委託販売形式にあるらしい。販売業者への譲渡なら、所有権は業者に移転している。しかし、委託だと、所有権は委託者に留保され、業者には移転しない。百貨店の売り場を借りているだけで、そのブランド品のメーカーが百貨店の顧客と直接取引をしていることになる。百貨店以外で、真正品が安価で販売されていることもあるが,それは真正品の並行輸入によるものである(並行輸入とは、海外で適法に真正品を買い付けて国内に輸入すること)。登録商標を付した真正商品の並行輸入は、商標の主な機能である出所表示機能を害することがないから、実質的違法性を欠き、商標権の侵害とならないとする判決があり(大阪地判昭45.2.27パーカー事件),それ以降並行輸入は問題にならなくなった。
 特許製品については、BBSアルミホイール事件(最判平9.7.1)において、国内における消尽論(特許権が使い尽くされていること。exhaution)が並行輸入で採用されることを否定しつつ黙示許諾論を採用し、真正品の並行輸入が認められた。すなわち、特許権者が留保を付さないまま特許製品を国外において譲渡した場合には、譲受人及びその後の転得者に対して、わが国において譲渡人の有する特許権の制限を受けないで当該製品を支配する権利を黙示的に授与したものと解すべきであるという。裏を返せば国外における第一譲渡の際に輸入禁止の特約等を定めれば、真正品の並行輸入に対して、国内の特許権者は、差止請求権を行使できることになる。これが、いわゆるブランド品の並行輸入にどう影響を及ぼすかという点は、不明。上述のように商標権の主な経済的機能は出所表示機能にあり、その派生として商品の品質が保証され、ひいては、需要者の保護につながることにあるのに対し、特許権のそれは、特許権者が特許権により各国の市場の特性に応じた収益を得ることによって、特許権者の収益の最大化を図ることを可能にし、それによって、設備投資意欲を高め、適正な産業発達を図るということにある。登録商標を付した真正商品の並行輸入は目的が需要者の利益を保護することにあるから,国内の販売業者が並行輸入禁止特約を結ぶことはできないのではなかろうか。商標権についても第一譲渡(メーカーから小売店への譲渡)で譲渡権は消尽するから、その小売価格について、メーカーは、商標権の行使により小売価格を決定するということはできない。

|

« 全株式譲渡と債権者保護 | Main | 猫に鈴(内部統制監査は三者協議か) »

Comments

初めまして。今課徴金について卒業論文を書こうと思い資料を探していたらこのページにたどり着きました。
いきなりで恐縮なのですが質問させていただきたいことがあります。
国際カルテルの場合各国当局が動き出し価格協定を認定し課徴金を課すことになった場合、数カ国から課徴金を請求されることもあるのでしょうか。
教えていただければ幸いです。

Posted by: kyocco | October 13, 2007 at 04:10 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/96921/16729184

Listed below are links to weblogs that reference 国際カルテル :

» パソコンとワークステーションとミニコンとオフコンの違い [パソコン.net]
「筐体の大きさがどれくらいあるか」、「どんな業務に利用できるのか」、といった観点で見た場合、以下の4者の間に決定的な違いが無い。4者を区別する場合は「歴史的事情(生い立ち)」と「内部アーキテクチャ」等を知る必要がある。パソコン パソコンの定義については、本ページの別の項目に解説があるので割愛する。なお、パソコンのルーツは二系統ある。一つはホスト機のダム端末のインテリジェント化として始まった系統。もう一つはTK-80やAltair 8800のようなホビーマイコンとして始まった系統である。特にホビーマイ... [Read More]

Tracked on October 11, 2007 at 08:36 PM

« 全株式譲渡と債権者保護 | Main | 猫に鈴(内部統制監査は三者協議か) »