ハーゲンダッツは甘いか苦いか
ハーゲンダッツアイスクリーム。日本法人ハーゲンダッツジャパン(HDJ)の出資はゼネラルミルズ・HDジャパン B.V.50%、サントリー40%、タカナシ乳業10%である。製品はおいしいが高かった(今は他のメーカーからもおいしいのが沢山出ている)。HDJが設立された頃は供給量が少なく、希望小売価格で販売するよう小売業者に要請していた。平成2年からアイスクリームの輸入自由化により供給能力が増大したが、その後も、それまでの希望小売価を維持するよう小売業者に要求した。まず、取引先卸売業者にその帳合先の小売業者に希望小売価格で販売させるよう要請し、自らの直接小売業者に要請した。販促活動でもこうした要請を繰り返した。まず①小売業者を巡回するセールスレデイー、会社の営業部員による取引先小売店舗でのハーゲンダッツ製品の価格調査をした。②価格調査と安売りに苦情をいうほかの業者からの情報で、希望小売価格を守るよう要請した③希望小売価格の要請に従わない一部の業者に対しては、卸売業者からの出荷を停止させ、試食販売時に希望小売価格以下で販売した一部の小売業者が、希望小売価格遵守の要請に従わなかったため、店舗から派遣社員を引き揚げた。④希望小売価格を下回る価格で販売しようとする小売業者に対して、試食販売などの販促の増加を申し出て希望小売価格を下回る販売をさせないようにした。このような締め付けの結果、ハーゲンダッツ製品は、小売業者において希望小売価格で販売されるようになった。HDJは並行輸入阻止を輸入もとの会社に要請するなど並行輸入を妨害した。
さて公取委勧告審決(平9.4.25)はいう。「正当な理由がないのに、取引先業者に対し、自ら又は取引先卸売業者をして」「希望小売価格を維持させる条件でつけて供給している」「これは独禁法19条の、一般指定12項1号および2号に該当する。並行輸入妨害は一般指定15項に違反する。よって、希望小売価格での販売要請を取りやめ、価格調査及び希望小売価格を下回る価格での販売を行う業者に対する希望小売価格の要請、この要請に応じない場合の集荷停止、派遣社員の引き揚げ、販促手段の提供の増加を条件とした希望小売価格販売をさせる行為の取りやめ、および並行輸入会社へに要請とロット番号調査,会社への通知などの取りやめよ。」
メーカーが幾らで売ってくれという要請は、価格を操縦し、価格競争を損ない、安売りを排除することから、一般指定12項は「正当な理由がない」「商品の販売価格を定めて維持させる」「商品の販売価格の自由な決定を拘束する」として、禁止している。どの程度なら「拘束」になるのか。ヤマハ東京が定めた「小売目安価格」を下回る価格表示をしないよう小売業者に指示し、また卸売業者を通じてその取引先小売業者に遵守を命じていた行為、松下エレクトロニクスが広域量販店に新聞折込広告や店頭表示でメーカー希望小売価格とは別の「参考価格」を下回る価格での価格表示をしないよう指示していた行為が違法とされた。「拘束」について、公取委事務局のガイドラインは「メーカーの何らかの人為的手段によって、流通業者がメーカーの示した価格で販売することについての実効性が確保されていると認められるかどうかで判断される」としている。具体的な事実の積み重ねによって、実効性の確保を検証することになる。
並行輸入元への要請は「拘束」判断にどの程度の比重を持つのだろう。海外商品輸入の際、メーカーの子会社や正規の契約を結んだ代理店が輸入・販売するのではなく、他の業者が輸入することをいい、輸入ルートが二つ並行するから、並行輸入という。価格が正規代理店よりも安かったり(内外価格差が大きい商品ほど、並行輸入による価格メリットが大きい)、国内未発売の商品が手に入ったりといったメリットがある一方、返品や購入後のメンテナンスなど、アフターケアが不十分なことがある。かって、正規代理店が商標を専有して使用できるとして並行輸入業者に対して輸入の差し止めを求めていたが、1971年からは合法となった(パーカ万年筆事件)。並行輸入には個人が直接(代行を介さず)外国の販売店へ商品を注文して購入する形態もある。通信販売の購入先が国内から外国に変わったもの、自国では手に入りにくいような特殊なサイズの衣類や一部の医薬品など、その国では入手しにくいものの購入に利用されることが多くなっており、インターネットの発達で高度な語学力も要しなくなり、クレジットカードも使える。並行輸入の禁止など、時代遅れそのものである。
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