October 22, 2009
夜が涼しいと温泉が恋しい。名湯の本がたくさんあり,頁をめくる。
日本三名泉 有馬温泉(兵庫),草津温泉(群馬),下呂温泉(岐阜)
徳川家康以下4代将軍に使えた儒学者・林羅山が,摂津・有馬温泉にて作った詩文集第三に「諸州多有温泉,其最著者,摂津之有馬,下野之草津,飛騨之湯島(下呂)是三処也」に由来している。しかし厳密には,室町時代の僧,万里集九がこれらを三名泉と既に書き残しており,林羅山がこれを追認した,とある。
日本三古泉 有馬温泉,道後温泉(愛媛),白浜温泉(和歌山)
日本書記・風土記などに登場。白浜・道後の代わりに下呂,別府等を入れる説もある。
日本三大美人の湯 川中温泉(群馬),龍神温泉(和歌山),湯の川温泉(島根)ただし,出典不明だそうだ。そうと聞けば,この目で確かめたくなる。
海底温泉
ガイドブックには載ってない。むかし口之永良部島で経験した。20メートルの海底に湯の華が厚く積もっている。温かい海水がウエットスーツに入り込んで,奇妙な感じ。フィンで華が舞い上がり,魚も見えない。やはり,水は澄んでいる方がいい。
さて,かって「源泉掛け流し」の表示が問題視された。05年に温泉法施行規則が改正され,①加水②加温③循環濾過④入浴剤,消毒剤の添加などを表示することになった。古い温泉は成分が変わっていることもあり得るので,07年の改正温泉法では,10年ごとに成分分析しなければならないこととされた。長野,大分,奈良,新潟,北海道でも成分分析を表示し,湯の使い回しをしない事を宣言しているが,殆どの温泉は成分分析を義務づけていない。温泉は薬と違って,品質保持がしにくいから,偽装表示で損害賠償になることはないだろう。品確法も温泉成分表示には向かない。口コミ,雰囲気も含めてどれだけ客の人気を獲得できるかで,日本百名泉にランクを決めるのがいいかもしれない。
温泉法には,源泉温度が,48.3℃で,25℃以上。容存物質総量が,1.272g/㎏で,1g以上。遊離炭酸250ミリグラム以上,重炭酸そうだ340ミリグラム以上,ラドン20(100億分の1)ラジウム1億分の1ミリグラム以上などの成分を一つでも含んでいるもの,という要件がある。温泉であることを条件に温泉権を売買し,温泉の要件を満たさないことが分かれば,要素の錯誤により契約が無効になることもある,などいうのは無粋です。
温泉の成分,禁忌症,入浴,飲用上の注意を表示する義務もある。それぞれの成分にどのような効能があるかは医学上の問題だから,表示する必要はないが,誇大表示すれば嘘になる。
よく似た話がバイオラバー。次のような医薬品販売会社の広告が問題になっている。
マット上に横たわり間接的にがん細胞と接触することで,がん細胞が弱体化する。米国政府の公認機関,DNAマイクロアレイが繰り返し検査した結果,同じ効果が確認され,米国フロリダ州で5月に開催されたASCOで正式承認された。次世代抗がん剤として注目されている酪酸ナトリウムとこのマットとの併用で,2-3倍のがん細胞抑制(死滅)効果があることが実証されている? う~ん。高い。
温泉溶剤にも効能表示はある。「神経痛,リュウマチに効きます」などの表示が一般的である。「癌治療に効きます」と表示したらどうなるか。信用する人はいないだろうが,神経痛,リュウマチに効かなかったら表示違反を問えるか。これは入浴人の主観と身体条件が大きく左右する。医療行為と一緒で,よくなる人とよくならない人があり,必ずよくなるわけではない。効能がないと言って文句を言う人はいないと思うが,気持ちがよくていい気分にさせられるのが温泉の効用である。ブタペストで温泉には入ったら冷泉だった。向こうの人は平気で冷たいジャグジーに浸かっていた。あれが温泉なら日本のは熱泉だ。
温泉の成分分析は専門の機関が行い,表示には正確を期している。成分が表示と違うと,薬事法に抵触するだろうか。温泉成分は薬品ではない。成分の誇大表示は,薬事法違反にならない。それでは温泉水濃縮剤はどうか。これを誇大表示したため,家庭の風呂に入れることで同じ効能を期待した人は,期待を裏切られたとして異議を言えるのか。
お湯から成分を取りだして商品化した瞬間に,「一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示し,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがある」(景表法4条一項)ことになるのだろうか。答は否と思う。
濃縮剤商品はその地だけの産物でほかの温泉の濃縮剤と単純に比較できない。競争力をもつ商品というのに馴染みがない。競争を阻害すると言っても,効能表示に嘘があることになったら,評判を落し,付加価値を期待する人が寄りつかなくなるから罰則は要らない。表示で不当に客を誘引できるか,も不明である。新興宗教ならいざ知らず,温泉水の成分でよくなるなんて信じるほど消費者は無知ではない。詐欺的な商法であれば刑法犯にもなるから,そんな手間暇かけて,面倒を背負い込む商売人もいないだろう。
温泉法の基準への適応を見る3つのポイントは,源泉温度,溶存物質総量,特殊成分であることは触れた。次は,この温泉分析書で泉質名はどのようにして決定されるのか考えてみる。まず,泉質名の決定はどうか。
泉質名は,1978年改正の「環境庁鉱泉分析法指針」によって特に治療の目的に供しうるものとして規定された療養泉の基準値をクリアしていれば,付けるられる。この温泉分析書で,温泉の基準に適合した3つのポイントの内で,泉質名の決定に関係するのは,第1の源泉温度と第2の溶存物質総量。
第3のメタケイ酸は温泉の判定には関係するが,療養泉を決定する特殊成分(遊離二酸化炭素,銅イオン,総鉄イオン,アルミニウムイオン,水素イオン,総硫黄,ラドンの7つ)の基準にはなく,いくら多く含まれていても泉質名の決定には関係ない。
第1の源泉温度は,第2の容存物質総量が1g以下で,療養泉を決定する特殊成分も規定以下の時に,25℃以上の温泉に単純温泉又はアルカリ性単純温泉(pH8.5以上のとき)の名前を付けるのに関係するだけ。
従って,第2の容存物質総量に注目し,その含有イオンの割合によって塩類泉としての泉質名が決まることになるという。「温泉の成分,禁忌症及び入浴上の注意事項掲示証」と呼ばれ,温泉法第13条で掲示が義務づけられている。
これには,温泉の成分として①源泉名,②泉質,③泉温(源泉と使用位置),④温泉の成分,⑤温泉の分析年月日,⑥分析者が,禁忌症及び入浴又は飲用上の注意として①浴用の禁忌症,②飲用の禁忌症,③入浴の方法及び注意,④飲用の方法及び注意,⑤禁忌症決定年月日と決定者が記されている。今度,入浴時にちらっと見て下さい。
次は温泉に関する権利の説明。
温泉を直接利用したり,引湯して利用したりするための権利。慣習法上の物権であるが,法律上の権利ではない。権利の名称は様々で温泉専用権,温泉利用権などと呼ばれている。.共有もあれば.合有(組合契約により作られた団体の所有),.総有(契約なき自然発生的・慣習的団体による所有)もある。ゆえに温泉専用権,温泉利用権などと様々に呼ばれている。
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October 16, 2009
以前の法改正議論で恐縮だが,平成5年の商法改正国会議事録を読み返して感じたこと。
そのときの改正論議では,株主の監督是正機能強化,監査機能強化が大きな目玉だった。当時,日米構造協議の中で取り上げられた株主代表訴訟,社外監査役(アメリカには監査役制度がないので,社外取締役というべきか)を導入し,監査役が会社の業務あるいは会計の監査をするためにその分,株主の権利が制限されている(たとえば帳簿閲覧請求権が厳しい)のをどう是正するか,などが議論された。
とくに企業経営内容の開示はアメリカの強い要求であり,株主の権利を拡充することを約束させられた経緯がある。
株主代表訴訟制度は昭和25年からあったが機能していなかった。監査役による日常的なチェックが期待できない状況があり,会計監査も違法,不正の摘発に至らなかった。
だから,株主自ら会社が取締役の経営判断をチェックするしかない。しかし,会社が違法行為をした取締役等から回復すべき損害の額が多いほど,提訴時の印紙代が高い。そこで,訴額を一律95万円とし,印紙額8200円で訴訟を起こしやすくした。訴訟物は取締役等に対する請求額であり訴えの利益でもあるが,会社が代表訴訟で受ける実質的利益は別にある。むろん,勝訴して回収できる額もだが,違法な株式発行差し止めにより,将来的に会社が受ける利益などは計り知れない。
そういったことが,費用計算するときの「相当な額」に反映される。代表訴訟に勝訴した株主は会社に対し支出した費用を支払いを請求できることにしたのである。ただし,代表訴訟は原告が勝訴しても個人的に受ける利益は何もなく,提訴のインセンテイブは弱い。アメリカでは,デイスカバリにより原告株主が広範な資料・証拠・情報を収集することが可能であり,93年の連邦民訴規則によって導入されたデイスクロージャーが適用されると被告取締役側が基本情報については最初から開示することになっているが,日本ではこうした情報開示制度はなく,印紙額を安くしても原告株主の手元に必要な資料はなく,訴訟維持が困難である。
このように勝訴株主は相当な費用と,相当な費用と報酬を会社に請求できることにしたが,この点の法整備が不十分であったため,勝訴しても,また提訴するという大きな負担を残した。
政府委員の答弁を読んでも,代表訴訟の後始末について何も考えていないことが分かる。
法律家参考人もかえって濫訴の心配をしており,新しい法制度をいかに活性化するかの視点がない。提案しながら逆の方向を向いていた。
社外監査役の導入は,平成3年以降の証券金融不祥事(野村,日興,山一証券の損失補填)の発生で,監査機能を充実させるべきだという時代の要請が,経済界の反対を押し切る原動力になった。
株主の帳簿閲覧請求権は何に使われるのだろう。取締役が不祥事を起こせば,責任追及のために取締役会議事録,会計帳簿を閲覧することが有益である。議事録にはどの取締役がどのような発言をしたかが詳しく記載されているはずであるからである。発言記録がなければ問題意識がなかったと事実上推定される。
会計帳簿の閲覧は,旧法では発行済み株式の1割を持っていないと出来なかった。大会社であればおそろしく大株主しかできない。改正後の3%でもそうだ。帳簿の閲覧請求権は機能するのか。一人では無理だから何人か集めて3%を確保するしかないが,大会社に対しては無理だろう。政府委員は,閲覧の対象は,営業上の諸帳簿,総勘定元帳,日記帳,仕分け帳簿,補助帳簿等すべてであるから,大切な書類で無闇に見せる物ではないと説明している。会社は株主が権利確保するための調査目的もなく請求したら,閲覧を拒否できる。
どこまでが権利確保のための調査目的なのか。2号の「競業の意図」とならべて見ると,株主の権利と関係のない個人的な投資目的のための資料としての閲覧などであろうか。閲覧謄写により利益を得る目的で他人に通報するためであれば,取締役は請求を拒否できた。
取締役会議事録の閲覧謄写につき,昨年12月26日の佐賀地裁の決定,①の個人的利益を計る目的でも株主権利行使目的も併存することがあるという判断には賛成,②の株主としての権利行使に藉口した請求であり,実質は株主の権利行使であると認められない場合については,必要性の要件が否定されるという判断は,ケースによる。会社の損害を株主の利益と比較するという設定自体に,基準として曖昧さを感じる,との私の意見を述べた。
取締役会議事録と会計帳簿の閲覧制限事由は異なる。会計帳簿の閲覧は株主の権利行使のためでないとき等を除き,原則として自由である。権利行使目的,競業意図,利益目的での通報など閲覧制限事由があるのだから,100分の3以上の株主を集めなければならない理由に乏しい。実際に100分の3の確保は非常に難しく,大会社での実例はM&A事案以外に見当たらない。
平成17年にも会社法の改正があった。
会計帳簿・計算書類は商法の規定と大きく変わっていない(100分の3もそのまま)。会計帳簿の適時に正確な記載をなす義務づけ規定(会社法432条1項)が設けられた。
経営陣の職責として,内部統制システムの構築を明文化したことに伴う義務である。
適時開示させるのはいいが,株主固有の権利である閲覧請求の要件が依然として厳しいのでは困る。(アメリカでは,コモンロー上,閲覧謄写請求権は株主の単独請求権として認められている。)
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October 07, 2009
今月1日から改正道路交通法が施行され,高速道路での車間距離を十分にとらない運転や,車体を左右に振ったり,急激に車間距離を詰めたりして前の車をどかそうとする「あおり運転」への罰則が強化された。
静岡県警は,東名高速上り線の日本坂PAで,罰則強化を広く知ってもらおうと,チラシを渡しながらドライバー一人一人に説明して回った。
道路交通法の一部改正で,車間距離不保持の交通違反点数は1点から2点になり,反則金は普通車で6千円から9千円に,大型車は7千円から1万2千円へと引き上げられた。
高速道路での人身事故のうち,追突事故が7割近くを占める。ハンズフリーの携帯電話などを使って「今あおられているから来てほしい」と車内から110番通報するドライバーも多いという。
高速隊は「(ETC利用車の)高速料金が安くなっており,利用者が増えた。その結果,交通量が増えてスピードが出せず,あおる人も目立っている」とし,安全な車間距離をとるよう注意を呼びかけている。
あおられてあわてて携帯電話しても,道交法71条5の5の携帯電話使用の罪になり,5万円以下の罰金に処せられるはずだが,その辺はどうなのだろう。あおられたら車線を変えればとりあえず危険を避けられる。あおり行為自体を重大な危険行為ととらえ,警察に通報するのであれば「公共の安全維持にため緊急やむをえず」携帯したことになり,問題になるまい。頑張って車線を譲らない人が,結構「あおり」を通報しているのではないか。
携帯使用は反則金を納めれば罰金にはならない,つまり刑事事件ではない。使用,保持は軽微な罪だからといって,「緊急やむを得ず」携帯しましたまで反則金を払わせるのか,警視庁の見解を聞きたいところだ。
そもそもあおられて携帯電話する運転手を,警察が現認すること自体が考えられない。どうやって事実確認するつもりだろう。
高速道路ではなく一般道路で一旦停止中に携帯電話すると,同条の「停止しているとき」にあたり,罪にならないか。渋滞中はいつ車両が動き出すか分からないから,停止中ではないだろう。赤信号で止まっているときはどうか。これも一信号が変わるか分からないから,「停止中」ではないだろう。「停止しているとき」は道路脇で車を止め走行していない状態のことをいうように解される。尤も,信号待ち中は違反ではないという説もある。
さて,実情はどうか。法施行後はかなりやかましく,携帯電話運転を取り締まっていた。現在は多くの運転手が堂々と携帯電話しながら片手運転している。警察が取り締まっているのを見たことがない。高速道路でのろのろ運転しているときに「今渋滞中。到着は遅れる」と電話する人は非常に多い。ついでに仕事の話や家の用事,はては雑談を延々とやる。危なくて仕方ないが,見て分かれば,そのような車両の後ろにはつかないようにしている。
しゃべりだけでなく,携帯保持にも,罰則がある。ただし,携帯の画像を注視することが条件。つまり,チラッと画面を見るのは除かれる。野球やゴルフのニュースをチラッと見るごとし。携帯という利便の道具が危険を招く道具になっては悲しい。祝祭日の渋滞が恒常化しつつある今日,交通情報くらいは,携帯を使わないですむよう頻繁に表示してほしい。注視したか,チラッと見たかは,とどのつまりは主観の相違になる。車間距離を大きく開けたり,不規則運転しない限り,問題になるとは思えない。
携帯がらみの別の話。
独禁法違反で米クアルコムに公取委の排除命令がでた。
携帯電話の通信技術で多くの特許を保有する米通信技術大手クアルコムが,第3世代と呼ばれるデジタル携帯電話(注参照)などの製造を巡って特許許諾契約を日本のメーカーと結ぶ際,メーカーを不当に拘束する条件を定めていたとして公正取引委員会は先月30日,ク社に独占禁止法違反(不公正な取引方法)で排除措置命令を出した。命令は問題のある契約条項を破棄し,同様の行為をしないよう求めた。
公取委によると,契約は・ク社が特許を各社に有料で許諾する一方,各社の特許を無償で使える「無償許諾条項」・ク社と契約を結んだメーカー間で特許侵害があっても相互に争えない「非係争条項」を盛り込んでいた。
契約相手はシャープやNECなど18社。携帯電話の製造にク社の特許が不可欠と判断,契約締結を余儀なくされ,ク社が各社を不当に拘束したと認定。各社の研究開発意欲が損なわれ,ク社の地位が強化されることで公正な競争が阻害されると判断した。日本のメーカーは消費者が何を求めていると思っているのだろう。大切なのは,新機能の追及より,おびただしい情報をいかに系統的に(これが難しい)整理するかではないか。
携帯機能が多様・複雑になるほど,私には使いにくい。不要な機能も多い。電車で静かに本を読んでいる人より,携帯で情報収集,メールする人の方が多い。思考がどんどん浅くなっていかないか,心配だ。
(注)デジタル携帯電話では,音声を送信側で符号化して送信し,受信側でアナログ信号に戻す。エラーを訂正しやすいために伝播損失に強く,暗号化して送受信するために盗 聴されにくい。アナログ携帯電話と比較して高い周波数と広い周波数帯を使うため,一度に送ることができるデータ量を増やすことができ,リッチコンテンツ,音楽や映像配信など,大容量かつ高速なインターネット端末化を容易にした。
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September 28, 2009
国立大学法人は国から,公立大学法人は地方自治体から補助金を貰っている。大学法人化以降,年々,補助金である運営交付金が減っている。学生の授業料値上げも受験生総数減少の折,法人運営がむつかしくなっている。どうしても,一般企業の委託研究に頼りたい。それとも,寄附金を頼むかだ。寄附金で大学の運営費を賄う発想は英米には古くからあり,定着している。米国は大学全体で07年,297億ドルの寄附を得,そのうち卒業生からの寄附金が27%もしめている。わけてもキリスト教会設立の大学の歴史は古い。
日本では有力私学が大学の創立そのものを寄附に拠ったという歴史を持っている。従って今でも集金マシーンは健在である。(早稲田の同窓会は1200団体,慶応の同窓会は800団体を超える。)
国,地方自治体の補助金は一般運営費,科学研究費,図書購入費等に使われる。研究成果が出ないときの扱いが問題になる。期限付研究,または定年までの研究がまとまらなければ,国等に補助金を返さなければならない。科学研究費補助金は補助事業に対して全額給付されるものであり,他の経費と混同して使用することはできない。また,通常備えられているはずの設備機器の購入,給与等支払,旅費(研究成果を発表する時は別),その他研究に無関係の費用も補助金から出ない。研究の現場は金に困っている。
昨年7月,首都大学東京(東京都設立)で,研究費の不正使用で教員2名の懲戒処分があった。某教授は企業からの特定寄付金を財財源とする研究費を用いて,自身のゼミの学生を,勤務実態がないにも拘わらず,アルバイト雇用したことにして支払賃金の一部を学生から環流させ,研究費の経費として使用していた。某准教授はその指示を受け,その行為の一部に荷担した。環流した資金は,学会に参加する学生の旅費補助,外国論文別刷代金,国際会議参加登録料等に使われており,いわゆる私的流用はなかった。不正に使用された資金は,全額大学法人に返還された。
今年,東京医科大は,准教授ら6人が文科省支給のた科研費補助金478万円を取引業者に預けて管理させるなど不適切な経理処理をしていたと公表した。預け金は研究費用として使われており,私的流用はないという
今年,広島大学は研究費3600万円を不正にプールしていたことを公表。教授,准教授7人が2カ月~15日間の停職処分。
東京大学大学院の教授3人が04~07年度,出入り業者に架空の伝票をつくらせ,研究用補助金750万円を国から不正に得ていたことを公表。本来購入できない備品を買ったり,余った予算を業者に預けて不正にプールしていた。
名古屋大医学部教授らが研究費を架空の伝票を業者に作らせてプールするなど,不適正会計処理を行っていた。計2800万円の一部は私的に流用されていた。
ほかにも補助金の不正使用事件が公表されている。法人化と関係のない不正使用もありそうだ。
上記の企業の「特定寄付金」は,国,地方公共団体への寄付金,指定寄付金および特定公益増進法人(「公益の増進に著しく寄与する法人」として主務官庁から認定を受けた法人)への寄付金をいう。使途が特定された寄付金は,「委託研究費」と呼ばれる。特定の研究活動や研究者に資金提供され,資金提供者は研究成果等の対価を求める。委託研究に関係のない費用に使えば,目的外使用になる。某教授は目的外使用したと指摘された。
企業の委託研究費とは別に,「奨学寄附金」という制度もある。
これは昔から教員個人や研究室に寄附されてきた。尤も,文科省は教員個人宛の寄附金であっても,教員から大学に寄附させて,国は寄附金額分を大学に交付し,その経理を大学に委任してその教員の研究費に使っていた。大学法人化以降は,教員,研究室が国立大学法人,公立大学法人に寄附する根拠が無くなった。したがって,教員等に大学への寄附を義務づける規程を置く例がでてきた。大学自体が奨学を目的とする寄附を受けるのは別として,教授や研究室が寄附を受けたときに,なぜ大学に寄附しなければいけないのか,そのような規程の拘束力は疑わしい。教員が他の大学に転出していなくなったときに,大学が寄附金を自由に使いたいという狙いがあるのだろう。これだと寄附した者の希望が達せられないことになる。奨学寄付金は一般寄附金とは性格が違うのだから,大学が残余金の使途を変更できるという規程を設けているとすれば,法人の規程に問題がある。一定の割合の額を間接経費として控除して(オーバーヘッドつまりピンハネであり,これにも批判がある),残りを指定された教員や研究室に交付することも,問題である。教員個人で受けた寄附金を大学に寄附させること自体,法的強制力があるとは思えない。規程の違反には,懲戒的な処分しか考えられない。委託研究費との違いは,研究成果を資金提供者に給付する義務がない点にある。
「寄附講座」という手法もある。
企業等外部から寄附や支援を受けて講座を開設し,講座の人件費や研究費に提供する場合が多い。寄附講座は実際の講座という活動組織を設置するところまで寄付者が指示できる。
講座設立後は大学が主体性を確保して運営されることになっている。講座には研究内容を示す名称をつけ,教員は寄附金の使途に従って寄附講座の教育研究をすることから,研究内容が特定の企業に有利または利益に貢献する可能性が高く,モラルが問われる。反面,寄付者が個人だと,営利目的に使われる心配はない。個人の篤志であり,研究者の研究目的に使えるはずであるが,これとて大学が受入れて講座を設置運営するのであるから,寄附金の額が使い切れないほど多ければ,大学がいずれ漁夫の利をえることになろう。
とくに法人化以降,大学はあの手この手で,手元資金を確保しようと知恵を絞っているように思われる。
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September 24, 2009
平成19年4月発足した地方分権改革推進委員会は,国と地方の役割分担の抜本的な見直し,国の地方に対する関与の縮小廃止,これらの見直しに応じた国庫補助負担金,地方交付税,国と地方の税源配分のあり方の見直しを中心に,地方分権改革推進計画を作成し,地方分権一括法(仮称)を制定しようとしている。
昨年5月の第1次勧告,12月の第2次勧告(出先機関の再編・縮小を提言)を経て,これから第3次の勧告(これは地方自治体への義務付け,枠付けを緩和する内容を盛り込んでいる)をして,地方分権改革推進計画閣議決定にかけるところで,民主党を中心とする連合内閣が組閣された。動きは一時的に止まるが,新内閣の元で地方分権に向けての法整備は加速するだろう。私には補助金の行方が気になる。
国庫補助金は,国がある施策を行うため特別の必要があると認めるとき(奨励補助金),または地方公共団体の財政上特別の必要があると認める場合(財政援助補助金)の支出金をいう。つまり,法令により国が負担義務を負っているものが国庫負担金であり,国の立場から振興・援助が望ましい場合に交付するのが国庫補助金である。国庫負担金の例としては,義務教育学校の教職員給与・教材費・建築費,産業教育振興費など。国庫補助金(狭義)には,理科教育・へき地学校・学校給食などの設備整備費などがある。
「補助金等にかかわる予算の執行の適正化に関する法律」は,国が国以外の者に対して交付する補助金,負担金,利子補給金,その他給付金等を国庫支出金と定義した(第2条)。国庫支出金には,自治体の実施する事務経費の一部を国が義務的に負担する国庫負担金,国が地方自治体に委託する事務の経費を負担する国庫委託金,特定施策の実施の奨励や財政援助のための狭義の意味での国庫補助金がある。
国庫補助金は,近年,次第に肥大化し,補助事業の国と地方の行政責任があいまいになりがちで,地方自治体の自主性に国が干渉しがちであること,利権化しがちであることなどが問題とされている。このため,国庫補助金を縮小・削減し,使途が特定されない一般財源に切換えるとともに,国から地方自体へ税源委譲することなどを盛り込んだ三位一体改革の実現が図られている。小泉改革により平成16年度から18年度までの三位一体改革で,4.7兆円の国庫補助負担金の改革(スリム化約1兆円を含む),3兆円の税源移譲が行われた。
国庫支出金の主なもの
・国庫負担金・・・・・義務教育職員の給与等,生活保護費など
・国庫補助金・・・・・都道府県警察費補助金,交通安全対策特別交付金など
・国庫委託金・・・・・国会議員の選挙経費,国の用に供される統計・調査など
会計検査院による国庫補助金の検査,委託費の支払い過大や不正経理が浮上した。
平成18年度は,国の委託費について7件,独立行政法人について3件,公社について1件指摘された。地方自治体への国庫補助金の検査結果は分からない。
委託費は補助金のような特別法がなく,委託契約や一般法としての民法が適用されるため,その過払いや不適切経理についてどのような対応が行われているか,注視しなければならない。(決算委員会調査室 信国氏)
委託費は,「国の事務,事業等を他の期間又は特定の者に委託して行わせる場合に,その反対給付として支出する経費」をいい,助成金的性格はない。決算委員会報告で指摘された委託費は104億円。うち不当事項や処置済とされた金額は5億円超。当然,国から返還請求がなされる。
補助金は,補助金適正化法が適用される補助金として,①補助金 ②負担金 ③利子補給金 ④その他相当の対価を受けない給付金であって政令で定めるものという。同法には,それ以上,補助金についての明確な定義がない。補助金には,ア 国が国以外の者に交付する相当の反対給付を受けない給付金 イ その給付金を受けた相手方がこれによって利益を受ける ウ 給付された金銭に使用されるべき特定の用途が定まっている,という共通点がある。それならばということで,政令は助成金,委託費,交付金等の費目からこの共通点を持つ103項目を補助金と指定している。
国の補助金は,何にでも自由に使えるわけではない。
補助金適正化法は,補助金の交付の決定に際し「公正かつ効率的に使用されるよう努めなければならない」,「各省庁の長は補助金の交付が法令及び予算で定めるところに違反しないか,補助事業の目的内容が適正か,金額に誤りがないか等を調査しなければならない」としている。補助事業の遂行に際しては「善良な管理者の注意をもって補助事業を行わねばならず,いやしくも補助金を他の用途に使用してはならない」のである。
ゆえに,目的外使用については返還義務がある。
「各省各庁の長は,補助事業者等が,補助金等の他の用途への使用をし,その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは,補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。間接補助事業者等が,間接補助金等の他の用途への使用をし,その他間接補助事業等に関して法令に違反したときは,補助事業者等に対し,当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」「補助金等の交付の決定を取り消した場合において,補助事業等の当該取消に係る部分に関し,すでに補助金等が交付されているときは,期限を定めて,その返還を命じなければならない。補助事業者等に交付すべき補助金等の額を確定した場合において,すでにその額をこえる補助金等が交付されているときは,期限を定めて,その返還を命じなければならない。」と。年率10.95%の加算金や延滞金,罰則までついている。地方公共団体の行う補助事業については,財務会計上の行為として違法・不当な公金の支出ではないか,違法・不当な債務の負担ではないか,の住民監査請求を受けて住民訴訟に発展することがある。補助金の目的外使用は国に返還義務を負うため,最終的には住民の負担となるからである。
八ッ場ダムは国の事業であるが,受益者である下流部の地方自治体が,移転する住民の生活再建事業費を一部負担している。2度目の計画変更で事業費が2100億円から4600億円に上昇した。
恩恵を受けるはずの利根川下流の一部住民からは「ムダな公共事業」との批判が起こり関係都県(東京,千葉,埼玉,群馬,茨城,栃木)の各地方裁判所においてそれぞれ公金支出の差し止めを求める住民訴訟が一斉提訴された。原告にはダム予定地に住む住人は1人もいない。行政訴訟事件の最初となる判決は今年5月11日,東京地裁は原告の請求をいずれも退ける判決をした。事業を中止すれば,これまで支払済みの利水関連事業費1460億円(厚労省からの補助金を含む)が利水者である東京都,埼玉県,千葉県等の負担から国が負担することになるという。公会計内での負担者の変更に他ならず,結果として,事業を中止しても,継続した場合の事業費を上回ることはないらしいが,複数の自治体にまたがる事業だけに,ただの地方分権問題として論じることが難しい。
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September 16, 2009
15日,ジャパン・デジタル・コンテンツ信託会社(JDC)が金融庁に信託免許を取り消された。法令上必要な純資産額1億円を下回り,顧客財産を適切に管理する内部管理体制の構築が難しいと判断された。信託会社の免許取り消しは初めてという。(9.16日経)
JDCは6月提出の内部統制報告で,重要な評価手続が実施できず,事業年度末日時点において,財務報告に係る内部統制の評価結果を表明しなかった。実施できない重要な評価手続というのは,①全社的な内部統制の評価手続 ②業務プロセスに係る内部統制の評価手続であった。金融庁の信託業法第44条第1項に基づき3ヶ月の信託業務停止処分等を受けていた。金融庁は業務停止のほかに,①全受益者と協議の上,信託契約の解消,受託者の変更その他受益者保護のために必要な対応の実施する ②信託財産を保全し,受益者を保護するために必要な業務を適切に行うために必要な内部管理態勢を整備する ③委託者から受託した信託財産の保全と分別管理を徹底する。会社財産を不当に費消する行為をしない。④信託勘定から実行されている融資資金を目的外使用している状況を解消する ⑤以上の業務改善計画を6月25日までに提出し,改善計画の実施完了までの間,1ヶ月毎に改善状況を報告する,などを命じていた。したがって,監査人は内部統制監査につき意見を表明しなかった。
今回の免許取り消しには,次の処分もついている。
①受益者の処分内容を周知徹底する ②受益者の権利を説明し,権利行使の以降を確認する ③信託財産の適切な引き継ぎを含め,受益者保護を図る ④信託財産の分別管理を徹底し,流用などをしない ⑤9月末に提出する約10億円の第三者割り当て増資を12月16日まで実施しない,などである。
08年6月,元社員の資金流用が発覚し,翌年,等の経過がある。顧客の資金の流用,使い込みは刑法犯でもある。社内監査が出来ていないから,不祥事が発生する。内部統制が機能せず,監査役も職務を怠ったか。
JDCはもと通商産業省官僚,長銀出身の社長がコンテンツ産業を育成する名目で通産省の支援を受け、98年に設立して,00年,東証マザーズに上場し、信託業法改正後の06年には第1号の映画ファンドを組成し,「フラガール」などの作品がヒットした。しかし、あとが鳴かず飛ばずで、高リスクの自己投資のファンド運営にのめり込み業績を悪化させた。08年に入ると不祥事が続出。6月には従業員がファンドの出資金の一部を持ち出し、金融庁から最初の行政処分を受けた。09年2月には、03年から繰り返していた複数の会社との循環取引(架空コンサルティング業務の受発注を繰り返していた)による粉飾が発覚し、有価証券報告書に虚偽の記載をしたことがわかり,過年度の決算修正を余儀なくされた。純資産額が最低の1億円を割り,経費の使い込み(社費でレクサスを購入)で社長が解任され,信用力が低下し,増資しか存続の道がなくなっていた。
昨年11月,第三者割当増資でシンガポールの投資会社が実質的なオーナーになって行こう,株価は乱高下していた。投資会社の出資の受入を発表し6月には高値をつけたが,また下がった。
監視委員会は,株価乱高下,純資産額不足の原因を,情報の適時開示に不自然な発表内容が少なくない結果と見ているようだ。
亀井静香氏が内閣府特命担当大臣(金融担当)に就任すれば,たぶん監督は強化される。事故発覚後の行政処分に頼ってきた従来のやり方(JDCの検査に入ったのは今年2月)を改め,日常的な監督を行うには,専門家職員を増やすしかない。
投資家自身は何をすればいいのか。自分で情報を分析するしかない。
債務超過はその最たるものである。モック,リンク・ワン,アプレシオ,ネクサス,エルクリエイト,GDH,ネクステック,日本エル・シー・エー,アイレックス,フリード,すみや,などがそうである。ただし,裁判所は債務超過だからといって,引当金を積むことを要求しないから,外から見て分かりにくい。たとえば金融支援の可能性があれば,引当金を積まなくてよいというが,どこが金融支援するのか,いつどれくらいするのか,どれくらい又はいつ債務超過が解消されるのか,誰にも分からない,当事者会社がそう言っているのを裁判所もすぐ信用する(そごう事件東京高裁判決)。これでは企業経営努力も財務監査も真剣に取り組まれようがない。
自己資本比率の低い会社も要注意である。島田理化工業の自己資本比率は0.8,ヤマノホールディングス1.2,SBIネットシステムズ1.7,山陽百貨店2.0,新星堂2.2,総和地所2.3などと続く。関西汽船2.9,土屋ツーバイホーム3.1,どん 3.6などは最近の不況業種でもある。
内部統制監査はこれからも一定の役割を果たすだろう。また一定にとどまるしかない。金融庁の検査の手が及ばない,人手が足りないから,自主的に監査を求め,事後的に処分している印象を否めない。自主申告制を日本に導入したシャウプ勧告と同じ発想である。納税者が正直に申告し,もし脱税していればペナルテーを課す。(シャウプは所得税納税者に、前年の最終決定所得額以上の予定申告を義務付け、そのような申告が行われた場合は、予定申告に対する仮更正はしないことを保証するよう勧告。納税者に申告を求めない「予定納税制度」に改められて今日に至る。)直接税、間接税ではシャウプ勧告通りの税制改革が行われたが,地方税についてはシャウプ勧告の理想は挫折した。平衡交付金は地方交付税に換骨奪胎され、国庫補助金制度で補助金の使途が国によって定められ、「三割自治」と呼ばれるように地方自治の独立性が失われた。その後長い間この状態が続き、地方自治の独立性が今,さかんに議論されている。企業の監督行政はないに超したことはない。企業が情報を適切に開示していれば,余計な税金を使わなくてすむ。
内部監査,外部監査に期待するところは大きい。
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September 04, 2009
56社から,内部統制に重要な欠陥があるという報告が提出された。ただし,重要な欠陥が56社にとどまるか,欠陥が記載された内容にとどまるか,まだ検証されていない。
「重要な欠陥があり,内部統制は有効でない」と記載しながら,評価結果は54社が無限定適正意見,1社が限定付き意見,1社が意見不表明あるというのが今回の内部統制報告書の内容である。
金融庁のQ&A問48は,前者の「重要な欠陥」というのは,財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性が高い内部統制の不備をいい,それが直ちに企業の有価証券報告書に記載された財務報告が適正でないことを意味するわけではない,「重要な欠陥」は有価証券報告書に記載された財務報告を利用する際に留意すべき事項として,財務報告に係る内部統制に「今後改善を要する重要な課題」があることを開示することに意義がある,と説明している。くわえて,「重要な欠陥があると開示しても上場廃止や罰則の対象になったりしない,直ちに企業の有価証券報告書に記載された財務報告が適正でないことを意味するわけでないことから,内部統制に重要な欠陥=今後改善を要する重要な課題があることを適切に開示したことを以て,上場廃止や金商法の違反(罰則)の対象にならない(内部統制報告制度に関する11の誤解*5)」と事前に説明したことで,今後改善を要する重要な欠陥など56例を引っ張り出した,と考えられなくもない。
しかし,今後改善を要するほどの重要な事項なら,すでに改善していなければならないのであり,今後の課題として残す意味はないはずである。その表現は矛盾しているように感じられる。改善を要するが財務報告,内部統制報告は適正である,というのも分かりにくい。
実例でいうと,今年3月,社員が私的に会社の資金を流用する不正行為のあったことが発覚し,調査を経て過年度の重要な決算の修正をした,全社的な内部統制に於ける不正に関するリスクの検討が不十分であった,職務分掌・モニタリング運用が不十分であった,コンプライアンスが不徹底であったという評価を踏まえて,組織体制を見直し,人事異動し,監査要員を増員し,現預金管理規程を改定し,コンプライアンス委員会を設置した,と財務諸表監査,内部統制監査ともに適正意見を表明をした会社がいくつかある。金額も大きく単年度の不正行為ではない。しかし,このような財務諸表の重要な虚偽記載をもたらすような内部統制の不備が,今年3月に突然わかるということ自体が理解できない。
監査役も会計監査人も複数年度にわたって,どのような監査をしていたのだろう。すぐ手直しできたから,適正意見を表明するという程度の監査であったことを意味するから,実は監査は容易であった,過年度の監査には問題があったと言ってることにならないか。
さらにいえば,会社の命運を決するような事項は,単なる会計処理や会計年度の問題を超えて,長年の統制不備の集積であることが圧倒的に多い。某自動車部品メーカーでは,金型の購入ではないのに金型代金として支払われているとして,04年3月期以降の連結最終損益を1000億円以上減額修正し,さらに持分法適用関連会社に対して上層部が約30億円を不正に持ち出し,うち17億円が未回収となった。今年,社外調査委員会は①不適切な会計処理の原因は経理の体制不足②意図的な不正持ち出しではない,と報告した。次の特別調査委員会は,経理担当の執行役員は持分法会社に不正出金したと指摘し,社長と役員が不正したと報告した。続く責任追及委員会は,執行役員,常務の計4名,不正を止めなかった役員13名に損害賠償責任がある,4名に対しては訴訟せよと報告した。(日経8.24)
そうであるのに,会計監査人は,財務諸表は適正と意見表明した。ただし,継続企業の前提に重要な疑義を生じさせ状況が存在し,不確実性が認められる。従業員が無断で発行した支払手形及び持ち出した未使用の手形用紙を廃棄処分したと言っているが完全に処分したとの確証はえられていない,と追記した。内部統制監査の方は意見不表明である。
責任追及委員会の報告を見ると,金型検収済みの請求書が回されてきたら,経理課は営業課の指示と突き合わせをしないまま代金を支払った,専務がそれを指導した,会計監査人も規程等の不備をたびたび指摘した,コンプライアンスの重要性の理解がない,悪質である,と指摘されたとう。そうすると,過去の財務諸表監査の適正意見表明は一体どんな監査をして出されたのか,という疑問がわいてくる。いくら意見不表明の内部統制監査と一致しなくても構わないと言っても,内容においてすでにバランスを欠いている。
金融庁のQ&A問49では,「監査人は,内部統制監査で重要な欠陥を発見した場合や内部統制監査で十分な証拠が得られず意見表明できない場合であっても,これまで同様,実証手続により,財務諸表が適正に表示されていることにつき十分な監査証拠を入手することが出来れば財務諸表監査で適正意見を表明することが出来る」と回答した。今後も,内部統制は不備だが財務諸表は適正という意見表明が多数出ることあり得る。しかし,何度も確認されたように,財務諸表の記載に重要な影響を及ぼすおそれのある内部統制の不備は,会計監査人の責任において発見しなければのであって,個別事案で発生する内部統制の不備の方には目が行き届かなかったという安易な弁解はおそらく通用しないだろう。
内部統制報告書の殆どが,金融庁が示した参考例に従って報告書の記載内容を整えている。これを読んだだけでは,内部統制のどこにいつからどのような不備があったのか,どのように改善されたのかもしくは改善されていないのか,具体的でない記載内容にとどまっており,投資家からも不満が出るだろう。
金融庁は今後,報告書のどの点に注目するか。推測だが,企業の特性に応じた重点項目及び適時開示の有無であろう。内部統制報告書を鵜呑みにせず,かつ公平に審査するためには,何社かずつ毎年,ピックアップして当該企業の重点項目を特定し,あとの年度はその点を中心にフォローする。統制不備等の問題が指摘された点は当然毎年の検査対象になる。そうやって,何回か繰り返していくうちに,上場企業全てに目が行き届くようになり,鳥瞰できるようになる。業種ごとの重要な事項の共通項も見つかる。すでに定めた内部統制実施基準で十分な監査が出来ないことが分かれば,実施基準(07年2月16日指針)そのものを見直す。今後改善を要すると記載した報告書は,改善されたかを確認する。ということになるのではないか。
それにも拘わらず,内部統制が徹底されない企業は少なからず残ることが予測される。もしも,改善した,検査した,問題なしとして指導されなかった企業から問題が出れば,過年度の内部統制報告書,同監査報告書は嘘になる。実施基準の不備,内部統制運用の不備,監査の不備が明るみに出る事態もありえよう。実態を把握しない報告書で損害を受けた関係者,そして市場と投資家はだれに文句を言えばいいのか。金融庁は,内部統制に不備に加えて,内部統制報告自体の不備,内部統制監査業務の不備の調査,指導に乗り出さないと,市場の信頼に応じられなるのではないか。
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September 02, 2009
衆議院選挙の結果と新しい内閣に向けての動向で影が薄くなっているが,最高裁裁判官の国民審査の結果に触れないわけに行かない。総務省は31日、衆院選と同時に実施された最高裁判所裁判官の国民審査の結果を発表した。
審査対象となった裁判官9人はいずれも、罷免を求める投票が有効投票の半数を超えなかったため、信任された。投票者数は前回より200万7404人多い6945万4375人。有効投票のうち、罷免を求める投票の割合が最も高かったのは涌井紀夫氏(裁判官出身)の7・73%、最も低かったのは宮川光治氏(弁護士出身)の6・00%だった。
投票率は66・82%(男66・95%、女66・69%)で、前回を1・33ポイント上回った。選挙の投票率が高くなったのに連動している。
衆院選の「1票の格差」を巡る07年の最高裁判決にかかわったのは9人のうち3人。この中で合憲とする多数意見を出した涌井紀夫裁判官が罷免率トップ、同じく合憲とした那須弘平裁判官が2位。一方、法律で国民審査の期日前投票の期間が投票日7日前からと規定され、衆院選より4日短いため投票できなかった有権者もおり、投票率は衆院選小選挙区(69・28%)より2ポイント以上低かった。
◆最高裁裁判官国民審査の結果◆
氏名(出身) 罷免要求票数 (率%)
桜井龍子(行政官) 4656462 (6.96)
竹内行夫(行政官) 4495571 (6.72)
涌井紀夫(裁判官) 5176090 (7.73)
田原睦夫(弁護士) 4364116 (6.52)
金築誠志(裁判官) 4311693 (6.44)
那須弘平(弁護士) 4988562 (7.45)
竹崎博允(裁判官) 4184902 (6.25)
近藤崇晴(裁判官) 4103537 (6.13)
宮川光治(弁護士) 4014158 (6.00)
事前に,経歴,担当した事件と判決結果など,一定の資料は新聞等で紹介されたが,とても最高裁裁判官の適格性を判断するに十分な質と量,とは言い難い。
何を基準に,×をつけていいか分からないというのが,率直な感想だろう。衆院の一票の格差を巡る判決で合憲判断をした裁判官の×が突出しているわけでもない。(前回05年の衆院選では、最大2・17倍の格差があったが、最高裁が07年に合憲と判決した。)
たしかに分かり易い評価点ではあるが,裁判官はあらゆる上告事件を扱うので,それだけで評価するわけに行かない。
就任して間なしの桜井,竹崎氏にも一定の×が付られたところを見ると,×をつけた人達の意識は,長官は天皇が,長官以外は内閣が任命するという裁判官選出の過程,手法に向けられている可能性がある。
選出過程で国民が評価できない人たちを裁判官にすること自体が制度不備だ,審査せよと言われてもよく分からない,人物評価できない,ならば×をつけておこう,という結果に辿りつくことは十分考えられる。
アメリカの連邦最高裁の裁判官は,上院議員が推薦し,ホワイトハウスが候補者を指名し,司法省が候補者に質問票を送付し,候補者を呼んで司法省の民事・刑事・公民権の各部門の責任者,訟務長官・司法長官が面接し,その結果を踏まえて推薦した上院議員と協議し,特定候補名で合意に達するまで交渉する。おまけにABA,FBIの資質,能力,経歴,素行調査まで行われる。そののち司法省が最終検討に入り,候補者を大統領に推薦するか否かを決める。ホワイトハウスでも最終検討し,大統領が候補者を指名する。まだ終わっていない。
上院委員会が独自に作成した質問票を送付して回答を求め,候補者が関与したあらゆる事件の判決と執筆したあらゆる法律論文を提出させ,司法省からのABAの評価資料やFBIの調査ファイルを受けて調査し,必要に応じて候補者とも面談する。司法委員会は公聴会を経て,議決する。可決されれば,上院による承認決議を経る。最後に大統領が任命する。日本の最高裁裁判官はこんな厳重な調査や審査は受けない。官庁や議会の調査・承認を経る必要もない。民意を反映する機会もない。衆院選挙でも情報公開の必要性が各党から協調された。裁判官(または候補者)に関する情報公開を言う党・立候補者はいなかった。
しかし,立法,行政とならぶ三権の一つには違いない。選出過程で国民が関与できないシステムのままでいいのか,改善を要するのではないか,司法に参加しながら不思議に思う。
次の問題は,個別の裁判官の評価方法である。法律実務家は,自分の仕事にも関係するから,各裁判官がどのような判決をした人物か,普段から注意深く見ている。よく見ていると,裁判官にもそれぞれ癖がある。条文解釈に忠実厳格な人。従来の判例の枠を超えず,判例変更にならないよう,事案に即した結論を導こうとする人。一般条項(衡平の原則,信義則等)で無理筋の論理の帳尻を合わせようとする人。現実の事件と解決法の不備,近代の大量の商品・証券取引の実情を汲み,それぞれに見合う法理を探そうとする,あるいは指針を示そうとする人。旧態墨守の人。私達はどんな事件でも判決理由に食い入っている。実務家はそれぞれ,最高裁裁判官をきちんと評価し,投票している。上記の数%の中に埋没して,衆院選挙とくに小選挙区制のような分かり易い姿となって見えないだけだ。
裁判官の使命は法的正義の実現にあるから,良心や信念と違うからといって,正義とみなされない判決を書くのでは,失格である。そのような裁判官はいないだろうが,国民がそれを知りそのように評価できる機会が少ない。そのことが,国民審査の本当の投票率(つまり×以外の多くは無関心または情報不足の結果である)が何回やっても低い理由になっていることは間違いなかろう。
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July 02, 2009
ユニオンホールデイングス 監査意見不表明。内部統制報告書に記載の通り,重要な評価ができなかった。財務報告に係る内部統制の評価結果を表明できないとしており,監査手続の実施に重要な影響があり,内部統制報告書に対する意見表明のための合理的な基礎を得られなかった。重要な評価手続を実施できなかった理由として,連結グループの人員の削減,期間途中の担当者の変更など,経理,財務の知識・経験を有する者を評価手続に従事させられなかった,海外子会社に日本の内部統制に要求されるITに関する規定がなかったなど,内部統制の構築,評価に想像以上の時間を要している,と弁明。
今の人員だけでなくプロジェクトチームを再編成して,グループ全体の内部統制の整備と運用評価を進める,という。
石垣食品 内部統制監査人は内部統制結果を評価できない(不表明)。財務報告の信頼性に関するリスクの評価手続が実施できなかった。連結グループ全体で人員を削減し,経理,財務の知識・経験を有する者をリスクの評価に従事させられなかった。尤も,会社自体が小規模で,内部監査の組織を持たないが,取締役の管理,各部署の相互監視は十分に機能し,不正誤謬が発生しないよう内部統制体制を構築している,と自己評価。人員の制約はあるが,環境を整備し早期に評価を完了するという。
ダイキン工業 財務報告の信頼性の影響の重要性の観点は,金額と質。業務プロセスの内部統制の評価範囲は,売上高の高い拠点から合算し,前連結会計年度の連結売上高の3分の2に達する事業拠点と,売上高の大きい事業拠点を対象とする。
その結果,本社サービス部門,一部子会社の財務報告に係る内部統制の不備は,財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く,重要な欠陥に該当する。よって,財務報告に係る内部統制は有効ではなかった。何が問題になのか。不適切な会計処理があった。工事売上,工事仕掛の計上・承認手続の運用が不十分であった。決算・財務報告をモニタリングする責任者が不適切な会計処理に関与した。経理財務本部に対するモニタリングが十分に機能しなかった(これだけを読んでても何のことか分りません)。内部統制監査報告書には,会計処理の重要な欠陥はあるが財務諸表監査への影響はない,と記載されている。
市光工業 決算・財務プロセスのうち,製品保証引当金や減損損失過程において,見積もりを適切に行うための検討や算定方法の理解が不十分だったことを原因とする重要な処理誤りがあった。その不備は事業年度末日後の財務諸表監査の過程で識別された。
フォスター電機 連結子会社に,従業員による売上債権回収代金の着服という不正があった。売上債権の回収管理の内部統制の瀬日・運用に重要な欠陥があり,同社に対する管理体制(モニタリング)が十分に構築できていなかった。不正の事実は決算日以降に発覚した。今後は適切な内部統制を整備運用する方針。なお,損害額は64億ウオン。謄写持分に係る損害は23億ウオンと想定され,連結財務諸表への影響は限定的,と報告。
監査人報告の追記情報は,この損害が弁償されない場合は,翌連結会計年度以降の財政状態に影響を与える可能性があるとしている。
KFE JAPAN 連結子会社の財務諸表作成体制の整備・運用,それに対する会社のモニタリングの整備・運用が不十分であった。連結財務諸表作成の知識・経験を有する者が従事できなかった。今後は人材を確保し,財務会計部門の社員教育を行い,適切な内部統制を構築する方針。監査人は追記情報に,会計年度末には子会社の資産と負債の配分額を確定させている,取得原価との差額(のれん)は,発生時に利益計上した,と報告。
滝沢ハム 内部統制に不備があり,財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く,重要な欠陥に相当する。財務報告に係る内部統制は有効ではなかった。すなわち,業務プロセスの輸入原材料仕入れプロセス及び在庫管理プロセスの一部において,適正な仕入れ計上,在庫計上に必要な承認手続の運用が不十分であり,仕入額,棚卸額の誤りが発見され,買掛金,棚卸資産につき重要な修正を行った。
幻冬舎 元社員が,私的流用を目的に資金を横領。今年3月に発覚,その後の調査を経て,過年度の重要な決算の修正を行った。全社的な内部統制における,不正に関するリスクの検討が不十分であった,少人数部署での職務分掌の運用上の問題,モニタリングの運用が不十分であった,コンプライアンスの徹底が不十分であった。
6月,管理部門の組織体制の見直し,管理局の下部組織であった経理部,総務部につき,管理局を廃止し,経理部及び総務部を局に格上げした。
ジェイオーグループホールディングス 上級経営者層の一部が内部統制を無視,無効にし,経営者・取締役会・監査役会に報告された全社的な内部統制の不備が改善されず。適正な決算業務を実施する体制が保持されず,年度末において決算処理の遅延が生じた。
平賀 6月の取締役会において,前代表取締役が取締役会の決議を経ずして独断で当社仕入業者に融資を行うため,約束手形を振り出したという事実が報告された。仕入業者への融資や,約束手形の振り出しに関し,規程で職務分掌や承認手続が定められていたが,前代表取締役が社内規程を無視し,独断で約束手形の振り出した。内部統制を通じて防止できなかった。その事実は,全社的な内部統制のうち統制環境の不備である。
監査人の財務諸表監査は不表明,内部統制監査も不表明である。
シャルレ 取締役会は,取締役及び執行役の職務の執行の監督するために,情報を必要とする。監督を担う取締役全員が社外取締役で,このような情報を伝えることが難しい環境で,適時,適切な情報を伝達する仕組みを構築できていなかった。
内部統制の基本的要素である「情報と伝達」における「①信頼性のある財務報告の作成に関する経営者の方針や指示が,企業内のすべての者,特に財務報告の作成に関連する者に適切に伝達される体制が整備されているか。」「②内部統制に関する重要な情報が円滑に経営者及び組織内の適切な管理者に伝達される体制が整備されているか。」「③経営者,取締役会,監査役又は監査委員会及びその他の関係者の間で,情報が適切に伝達・共有されているか。」を満たしていなかった。
次に,監督を行うためにはモニタリング活動が不可欠。社外取締役が十分なモニタリング活動ができるよう,使用人を直接任命できるなどの仕組みが必要であったが,構築できていなかった。内部統制の基本的要素である「モニタリング」における「①日常的モニタリングが,企業の業務活動に適切に組み込まれているか。」「②企業の内外から伝達された内部統制に関する重要な情報は適切に検討され,必要な是正措置が取られているか。」を満たしていなかった。
監査委員会は,執行役等(執行役及び取締役)の職務の執行の監査を担っているが,監査対象となる取締役と,監査を行う監査委員は,全く同一の構成員であり,自己監査を行う構造になっている。これでは委員会設置会社の要である監査委員会が,牽制機能を十分に発揮できない。内部統制の基本的要素である「モニタリング」における「①日常的なモニタリングが,企業の業務活動に適切に組み込まれているか。」を満たしていない。
上記の「情報と伝達」「モニタリング」における不備は,内部統制の基本的要素である「統制環境」全般に影響を与え,とりわけ「①取締役会及び監査役又は監査委員会は,財務報告とその内部統制に関し経営者を適切に監督・監視する責任を理解し,実行しているか。」を満たしていない。以上のとおり,内部統制の基本的要素である「統制環境」「情報と伝達」「モニタリング」に不備があり,全社的な内部統制に,重要な欠陥がある。
ジャパン・デジタル・コンテンツ信託 財務報告に係る内部統制の評価にき,重要な評価手続が実施できず。事業年度末日時点において,財務報告に係る内部統制の評価結果を表明できないと判断。実施できなかった重要な評価手続は①全社的な内部統制の評価手続 ②業務プロセスに係る内部統制の評価手続である。
(付記事項)金融庁長官より信託業法第44条第1項に基づく行政処分を受けた。内容は,3ヶ月の信託業務停止処分。信託業務の健全かつ適切な業務運営を確保するため必要があると認められる措置を講じよ,という。具体的には,① 全受益者と協議の上,信託契約の解消,受託者の変更その他受益者保護のために必要な対応の実施する ② 信託財産を保全し,受益者を保護するために必要な業務を適切に行うために必要な内部管理態勢を整備する ③ 委託者から受託した信託財産の保全と分別管理を徹底する。会社財産を不当に費消する行為をいない。④ 信託勘定から実行されている融資資金を目的外使用している状況を解消する⑤ 以上の業務改善計画を6月25日までに提出し,改善計画の実施完了までの間,1ヶ月毎に改善状況を報告する。
これにより,内部統制の見直しが予定されるため,翌期以降の財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす可能性がある。
監査意見は,財務諸表監査は適正,内部統制監査は不表明である。
注目点は,監査人による「不正・誤謬」の発見可能性。3月期決算前に原因があれば,過年度それに気づかなかったわけを知りたいが,何も記載がない。それとも,今期一斉に発見される問題ばかりだったのであろうか。
内部統制監査制度は今年から実施だが,「内部統制の有効性の評価」,「不正,誤謬による財務諸表の重要な虚偽記載を看過しない」義務は,平成9年からあったはずである。
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July 01, 2009
6月26日までに,内部統制報告書が各地の財務局に提出された今年3月期の上場企業は約1980社。うち30社が「重要な欠陥がある」と自ら報告した。(6.26朝日)
「重要な欠陥」とは,有価証券報告書の誤り,いわば粉飾決算にもつながりかねない不備が社内にあることを認めたもの。「重要な欠陥」報告をいくつか探して紹介したい。
セイコーエプソン 中南米3社で,不適切な経理処理が行われた。子会社を統轄する本社の「傘下会社に対するモニタリング」が適切に行われなかった。事業年度末までに問題が是正されなかった理由は,社内調査委員会による調査,事実解明,改善策立案,改善策実施が間に合わず内部統制の有効性を確認するに至らなかった。ただし,連結財務諸表の監査に及ぼす影響はない。
岩崎通信機 子会社のマレーシア(株)は国際会計基準に基づき財務諸表を作成しているが,新基準適用に伴うリスクの正しい判断が出来なかったため,現地通貨からUSドルへの換算手続での適用上の誤りが独立監査人に発見され,連結財務諸表の修正を行った。
ビジネスブレイン太田昭和 内部統制が有効でなかった。子会社の繰延資産の取り崩しの検討,認識が不十分であった。繰延資産の回収可能性の判断を誤り,それに対する牽制が充分に機能しなかった。ただし,会社が検討して,修正の結果は連結財務諸表に表示されている。
広島ガス グループの広島ガス開発,広島ガスリビングの管理者のリスク管理責任が不足し,取引の実在性に疑義を持ちうる状況(循環取引)があるにも拘わらず,その確認をしていないなど,対応が不十分であった。さらに前社は,1人の担当者が社外取引のすべてを対応するという自己完結的取引の状況が続いており,これを発見できなかった。管理部門から営業部門に対するモニタリングが行われていなかった。
本社も子会社職員に対するコンプライアンス意識醸成のための取り組みが不足していた。重要な後発事象としては,会社に対し,損害賠償訴訟が提起されていること。
内部統制監査人は,重要な欠陥があるため有効でないと表示した内部統制報告書が,財務報告の内部統制の評価の基準に準拠して,重要な点において適正に表示していると認める。
追記情報として,連結子会社2社の不適切取引は重要な欠陥に相当し,売上高,売上原価に重要な修正を行っているが,過年度の会計の監査が未了であるので,財務監査意見は,監査範囲に除外事項を付した限定付意見としている。
ダイオーズ 「運用保守管理規定」の運用が不十分で,コンピューターの保全手続にかかる内部統制に重要な欠陥があった。ただし,会社が修復済みであり,財務諸表に影響はない。
紀州製紙 重要な欠陥の金額的重要性の判断基準を35百万円以上とした結果,これ以上の会計処理の誤りがあり,重要な欠陥に該当した。原因は,連結グループにおいて,連結決算処理の知識,経験に長けた者を従事させることができなかったためである。
内部統制監査人は,財務諸表に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全に防止又は発見できない可能性があるが,内部統制報告書に記載された重要な欠陥のある連結決算処理において特定された必要な修正はすべて連結財務諸表に反映されており,財務諸表監査への影響はないと報告している。
日本興業 業務プロセスに於ける内部統制の評価範囲は,各事業年度の連結売上高予算の3分の2に達している事業拠点を「重要な拠点」とし,勘定科目として売上高,売掛金,棚卸資産,運賃給与,固定資産に至る業務プロセスに注目した。その結果,一部営業部門で適正な売上計上に必要な契約内容の確認,承認手続がされておらず,売上高に重要な修正を行うことになった。
遠州トラック 元従業員が行っていた会社資産の流用を疑わせる取引に関し,財務報告に影響を雄及ぼす可能性が高く,重要な欠陥に該当する。監督すべき立場にいた元取締役はこの取引の事実関係を把握せず,流用資産の適切な処理をせず,会社の利益になるものとして使用するという統制環境の不備があった。内部統制監査人は,重要な欠陥を考慮すべき監査手続,実施時期,範囲を決定しているため,財務諸表の意見に影響を及ぼさない。
フリード 統制評価と重要性評価をした。適切な開示に必要な会計処理や網羅性の検討,承認が不十分であった。損益計算書,キャッシュフロー計算書,注記の重要な修正を行った。知識,経験を有した者を従事させられなかった。内部統制監査人は,当期の報告で十分な評価手続をを実施できなかったとして,内部統制評価から除外したが,相当期間が必要であり,今回の除外はやむを得ない。
西松建設 内部統制の評価基準を,業務プロセスは財務諸表の信頼性に及ぼす統制上の要点を識別し,評価した。財務報告に係る内部統制の評価の範囲は,財務諸表の信頼性に影響を及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定した。重要性判断の基準は,金額と質的影響である。その結果,基準に照らして不備があり,重要な欠陥があり,内部統制は有効でないと判断した。
元取締役が外為法違反により罰金刑を受け,政治資金規正法違反で起訴された。これは「経営者の姿勢」「組織の行動規範」「取締役会の有効性」等の統制環境,全社的な内部統制不備に該当するため,重要な欠陥に該当すると判断した。内部調査委員会を設け,事実関係の解明,原因究明,再発防止を検討し,外部諮問委員会を設け,内部調査委員会による事実関係の調査や再発防止策の策定について助言指導を受けた。さらにコンプライアンス推進室を発足し,名部通報制度を開設した。匿名通報も可能とした。そのための規程も整備した。コーポレートガバナンス機能の回復に向けて,「内部統制システム構築の基本方針」「社外取締役の招聘,指名委員会・報酬委員会を設置。役員定年制・支店長会を設置。外部有識者を招きコンプライアンス委員会を組織。社内風土を改革する。
内部統制監査人は,内部統制報告書を作成する責任は経営者にあり,監査法人は,独立の立場から内部統制報告書に関する意見を表明すればよい。内部統制により財務諸表の虚偽記載を防止又は発見できない可能性がある。3月期の財務報告に係る内部統制が重要な欠陥があるため有効でないとした内部統制報告書は,一般に我が国において公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制評価に基準に準拠して,重要な点において適正に表示しているものと認める。追記として,工事原価(外注費)の計上に関するプロセスで処理された取引は連結財務諸表に表示されており,監査に及ぼす影響はないと報告。
何とも,多様な内部統制報告書,内部統制監査報告書でした。独立監査人の監査報告書,内部統制監査報告書がクローズアップされています。何せ,初年度ですので,報告のスタイルもそれぞれ違います。内部統制監査人がガードを巡らして守備範囲をいろいろと絞り,現代イソップ物語を読むようです。
興味深いので,あと何社分か読み続けてから感想を申し上げましょう。
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